第2話 光の中へ

私は死んだのか。


サーマリア国王トーマスは、意識が薄らぐ中で、魂だけとなった自分の体が大きな流れの中に引き込まれていくのを感じた。


これが死ぬということか。


自分の魂が徐々に崩れていき、上空に見える大きな渦の中に自分も溶け込まれていくのを感じる。


こうやって自己の魂が崩れていき、大きな渦と一体化し新たな生として生まれていくのだろうか。


そんなことをぼんやり思っている反面、魂の中心には、赤々と燃え沸る炎のような怒りが満ち溢れていた。


あの魔族どもを、私は絶対に許さない。新たな生になろうとも、どんな形になろうとも、私はこの誓いを永遠に忘れない。この誓いを私は、自身の魂に刻む。魂が崩壊しようと、絶対忘れない!


そう深く強く思いはするが、魂は徐々に自壊していく。悔しい。やるせない。決して忘れてはいけないものまで、私は無くしていくのだろうか。このまま、私は自分を失っていくのか。。。


そう思い、自壊していく魂が、上空の渦に吸い込まれながら、暗黒の空間を漂っていると、はるか下方に小さな光りが明滅しているのに気付いた。その光源の真ん中に『穴』があるのが分かると、そこにも少し吸引力があるのを、感じることができた。


まさか。。。あれは。。。!!


直感的に感じた。あれは、今まさに魂が出ようとしている生命ではないか。もしあの穴に入ることができれば、この誓いのまま記憶のまま、新たな生を生きることができるかもしれない!まさか、そんなことが可能なのか?


いや、もう既に死んだ身。魂は崩壊寸前。何を後悔することがあるのか。出来ることをやり尽くし、あの渦に還ろうじゃないか。


その決意し、その小さな明滅する光の中に入っていった。

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