第43話 残存拠点
ターミネーターの何作目だったか。人類の抵抗軍の本拠地が原子力潜水艦だった。
原子力潜水艦に乗ることなんて一生ないだろうと思っていたが、思えばアフリカからゾンビ禍が始まり自分が1年もゾンビにならずに済むなどという現実からすれば、原子力潜水艦に乗るくらいはさして驚きはない。
グロスマンによれば、奴らはコミニュティで哲学ゾンビの頭文字によりPZと呼ばれているそうだ。見た目と反応ばかり人間のふりをして内面は死んでいるのだから、まさに奴らは哲学ゾンビの名が相応しい。しかし本来の哲学ゾンビは外形や行動では生者と区別がつかないはずではある。どうでもいいことだ。
各国の原子力潜水艦や巡洋艦、人工島、南極基地は人類の最後の拠点として陸地と人員や物資を接続させないことが取り決めになったそうで、この船も1年以上、陸に寄港していないという。
「私が乗っていた船には漂流していた感染者が乗って来た。容易に漂着できる人工島や南極基地は危ないのではないか」
「実際、南極基地はどの国も応答がない」
イタリア風邪を超えた災いらしい。
無事な人工島も多くはなく、この船が寄港するのはフィリピン沖とベーリング海の2拠点だけで、環太平洋ではこの2つ以外は通信の応答がおかしいそうだ。
そして、この船が向かっているのはベーリング海に所在する石油リグだそうだ。
外が見えないので移動してる実感がわかない。
飢餓と脱水から回復するのに2日かかったらしいが、この時の私は時間感覚を喪失しており、それが短いのか長いのかもよくわからなかった。
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