第41話 漂流

文明どころか陸地では生態系まで破壊された今となっては最初から救助への望みを持ってない分、破滅以前に漂流するよりは気楽かもしれない。内陸にいれば、救命艇で釣りをしている今より飢えている可能性すらある。水道も井戸もないので雨水をバケツに蓄えることすら何ら変わらない。


オールは最初から漕がず、流されるまま、漂着物に接近するのを待つ。火などないので、釣った魚は頭をペンチで切断してからハサミで解体し、乱暴に切り取った筋肉を海水で血を洗って食べる。スシ(刺身のこと)の作り方を学んどけばよかった。何もかもが塩辛いので雨水が甘く感じる。


感染症と脱水症、どちらに先に殺されるのだろう。陸に戻っても漂流してても明日はない。陸に戻る意義があったとしても方法はない。ハチマンの喪失で私は急激に生きる気力を失いだしていた。

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