第26話 地下室

感染者は通常、生存者に全く興味を持たない。だから「開放空間では」1m以内まで接近しても刺激しなければ接触してこない。しかし、アカシの町でDが置換された時がそうだが、他の生存者から見えない条件が揃うと接触してくる疑いが濃厚だ。アカシでは家宅侵入したまま帰って来なかった回収部隊の人間が何人もいた。なので、昼間で感染者が中にいる可能性が低くても家宅侵入を避けてきた。

なんのことはない。強盗や泥棒、無法者然とした家宅侵入が彼らに接触を促す刺激になっていたのだ。

私は配管工や役所の人間を装って「家主」の興味をひかないよう気をつけ、金属板の蓋で保護された地下室に侵入。家財道具、書籍、骨董品の詰まった半地下で、私は久しぶりに木や布の持つ温もりと感染者への警戒を要しない安心を味わっていた。

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