第25話 擬態への擬態
あまりにも人と話をしておらず孤独感を日々募らせた私は、その日は家族や幼い頃の友達が出てくる夢を見ていた。寝起きで朦朧としたまま車外に出て、感染者があの頃の友達に見えていた。
「Let's hang out again,Joey」
(また遊ぼう、ジョーイ:原文英語)
「はは、温泉を楽しんでください」
(原文日本語)
返答を聞いて我に帰った。
もしも興味を持たれて接触目標にされたら逃げきれない。大変危険な行為だ。しかし置換が急速に広がりながら全く発覚しなかった通り、彼らは問いかけには当たり障りのない返事をする。英語の聞き取りができない彼には、私は観光客に見えていたのだろうか。何事もなかったように虚無を目指して去っていった。
銃撃や怒号のような強い刺激でなければ、人間なら奇妙に思うーーー外国人に突然知らない言葉で呼びかけられるようなーーー振る舞いは刺激にならず、生前の自分のルーチンを優先することがわかった。私は作業着と帽子、ハンドバッグ、レンチを取り出す。目指すは地下室のありそうな比較的大きな一軒家だ。
「失礼します。水漏れの件でお伺いしました。浴室を拝見させていただきます」
「ああ。お願いします」
(両方、原文日本語)
老人は縁側だったコンクリートの上で正座し、日光浴を続けている。こうして私は明るいうちから安全に家屋へ侵入する術を得たのだった。
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