第24話 水中

感染者たちは銃撃でも肉が変形するくらいで損傷らしい損傷を受けない。燃料をかけて火をつけたらどうなるのかは実験していないが、報復のリスク、限られた燃料の浪費、火が有効だったとしても残りの燃料で始末できる数を考えれば試す価値がない。

だが温泉や海に奴らの姿は見かけない。雨や雪が平気なのだから水自体は平気でも、人間が溺れるように、大量の水は苦手なのかもしれない。

だからといって、奴らを水中に引きずり込んで実験しようというわけではない。もしも水が苦手なら水中は安全地帯で、車の放棄を余儀なくされた時は水中に逃げこめばいいのではないか。あるいは船なら完全安全地帯で、生存者も今は洋上に避難しているのでは。

この考えを裏付けるように、木造船や流木が漂流しているのを見かける。あまりにも慣れた風景だから気がつかなかったが、牡蠣筏はずっとセト内海でも浮かんだままだった。

雪の中、飢えたまま寒中水泳で漂流船を確保しにいくのは自殺行為なので今は何もできないが、このアイデアによって私は夏まで生き延びなくてはという意欲が湧いてきた。破滅からこの手記を書くまでで1番胸がときめいた時だったろう。

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