第21話 下関
ずっと乾パンばかりで、雪をエンジンの熱で溶かして飲む日々は、未来もなく、寒くて、惨めだ。セルフサービスの給油所から給油所を転々としながら、暖かいことを願ってキュウシュウ島へ向かっている。
感染者はアスファルトから草むらに入る頻度自体は少ないが、何かの拍子に草むらに入ると草の禿げたわだちができる。一度できたわだちを足がかりに次々と草むら、林、森を蚕食していく。険しい山岳をものともしない感染者たちに植生は徐々に奪われ、チュウゴク山脈は砂漠のようだった。本場のゾンビは人間をフグ毒で処理して作るそうだが、フグを客に振る舞いゾンビルーレットしていたシモノセキも今や動き回る死者に埋め尽くされていた。
キュウシュウ島とホンシュウ島を繋ぐ鉄橋にはテントの骨組みやペグが山のように積まれた場所があり、アワジ島と同じようにコミニュティがあったことを偲ばせる。暖かさ以外の希望は恐らくこの先にはないのだろう。
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