第20話 雪
セト内海は暖かい。雪が滅多に降らない。地球温暖化の影響が出る前はそれでも12月には雪が降り積もる日もあったそうだが、私がヒメジに訪れてから1月の1番寒い時期くらいしかない。
それが11月だというのに雪が降っている。文明が終わり、温室効果ガスの排出が無くなったからといって急すぎる。異常気象だろうか。
感染者たちは凍える様子もなく、雪の中をいつも通り呑気に歩き回っている。夏の始め頃には身近な有機物を食い尽くし、さらにこの寒さでエネルギーを余計に奪われるはずだが飢えている様子がない。エネルギー保存則が合わないのではないか。置換された犠牲者を消化したら間に合うのかもしれないが、奴らは今はどうやって動いているのか。紙とペン、温かいスチームとコーヒーがあれば計算し、その疑問に答え恐ろしい事実にたどり着いたのかもしれないが、私自身が飢えと寒さに参っているのでそれ以上考える気にはならなかった。口の中で乾パンをふやかしながら身体を小刻みに震わせることの方が重要だった。
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