第19話 滅びの町

太陽光で自己給電していた街灯以外、町にもう明かりはない。ありとあらゆる可燃物は感染者の栄養になったので火事の心配はないが、文明の真っ只中にいても火を起こすのが容易ではなかった。金属缶で保管された軽油・灯油は案外少なく、給油装置は停電で動かない。大きな音や動きで感染者を刺激しないように地下タンクを開けて人力で燃料を取り出すのは容易ではない。

車の外に出ると柔らかい物が一切なく地面はベチャベチャしている。アスファルトの油分が少しずつだが確実に感染者に奪われ砂に戻っていっているのだ。

あらゆる動植物が姿を消し、金属と石ばかりが残された灰色の町。感染者ばかりが元気に歩き回っているその光景は、他種には人間の町がどう見えているかを教えているようだ。

教示は十分だ。元に戻してくれ。いくら願っても、感染者たちはニコニコと歩いて行くばかりだった。

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