第13話 思案
私は缶詰の気持ちになって自分の車の中で縮こまって思案する。奴らの筋力からしたら車の中にいても無駄だが、奴らは暴力を使って意図的に人間を置換してくるようなことはしない。缶詰を開ける力はあっても、缶詰に食べ物が入ってると認識する知能はない。今の私は缶詰に入ったミートローフで、缶詰は熊の巣穴に転がっている。
見張りを兼ねたEが置換されているということは、感染者がコミニュティに侵入してても誰も気づいていないということで、実際、Eの様子が変わってから数日経っている。正確な経過日数すらわからないほどの間、「Eだったもの」はコミニュティのテーブルで食事をしテントで寝起きしていたのだ。その間のEの行動は、雑踏を構成してる連中とは比較にならないほど高度だ。
こうなると誰が感染者なのかわからない。ルーチンの高度さはもはや安全の証拠にならず、決定的に創造性を欠いた行動をするか、周囲の有機物が不自然になくなるなどの兆候がなければ判別は不可能だ。回収部隊は全員1人1台の自動車かバイクを運転しているが、もしかしたら「あれ」はその程度はできるのかもしれない。
ならもう一度、入植時と同じことをしよう。無線で放送をして、反応する者だけを連れてここを脱出するのだ。
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