第12話 侵入

生存者には共通の特徴がある。「あれ」と接触したり2人きりになった者が全員置換されていることの裏返しで、社交性や協調性に問題があるから置換されずにここまで辿り着いている。私がDやEを名前で呼んでないのは実のところ、よく覚えてないからだ。このような特徴は、確かに感染を回避しやすいが、置換された者の違和感に対する感度を損なう。いつも不機嫌な顔をしていたEが、ある日を境に人当たりが良くなったことに私は好感すら感じていた。


その日、回収部隊が戻ってきてもEは一瞥もせずエンドウマメの害虫を取り除いているように見えた。彼の配給分の缶詰を渡しにきたところで異変に気がついた。彼の畑は雑草が生えていない。一見、手入れが行き届いていると解釈できる。しかし、大小様々な小石と土と砂が乱雑に散らばり均されていない地面は、雑草を一つも残さない丹念さと噛み合わなかった。そもそも取り除いた雑草はどうなったのか。入植初期に設置した緑肥用のコンポストには何も入ってない。


嫌な予感がした私はEに缶詰を渡さず軽く会釈した。Eはにこやかに手を振った。こんな爽やかな男じゃなかった。以前なら「何をしに来たのか」と特に用もないのに無駄なことをする私に説教の一つもしただろう。背を向けることに危険を感じ、畑を見回る振りをしながらEの姿が遠ざかっているのを逐一確認しながら駐車場へと逃げた。

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