第5話 絶滅危惧種

アフリカから日本の、それも国際空港のないクガに雑踏の因子を持ち込むにはどのような経路が可能か。それがイワクニ経由なら海外にいる米軍全体が汚染されている可能性があり、ヒロシマ経由なら経済活動に乗って汚染が広がっていることになる。少なくとも、記録上は石油化学コンビナートの無断欠勤者の方が先に急増していたようなので、ヒロシマ経由だったのかもしれない。どちらにしろ、クガに「雑踏」が発生したことは確定で、ヒロシマは人類史で2度も記録的な事件の爆心地となった。消滅したので3度目はもうないが。


クガを封鎖しよう、日本から脱出しようとパニックが一部で起きた。しかし、ほとんどの人々、正確な比率では98%はクガの事件を聞いても慌てなかった。


アフリカの「ムーブメント」を思い出して欲しい。雑踏に加わった人々は破壊も加害もしないし危険を感じても慌てない。P国ではAの突きつけた銃に「危ないよ」というだけだったように自分に向けられた悪意を理解できない。このように、「あいつら」は概して頭が悪いので、特に程度の低い「愚か者」は雑踏を形成し判別しやすい。しかし、「他の者」は雑踏に加わらることもなく日常会話なら自然でマシな受け答えができたのだ。


つまり、気がついた時には地球人の人口は1年前と比べて、2%近い数まで激減していたのだ。これを読んでるお前の周りに人間がいないのはこういう経緯だ。だからあまり責めないでくれ。本当に突然だったんだ。

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