第4話 飛び火

ジブラルタルの封じ込めが甘いのではという予測はたしか聞いたことがあった。次漏れるとしたらスペインかエジプトだと。その次が紅海西岸。最悪の場合、封じ込め前に国際空港のある都市に種が蒔かれているかもしれない。


ヒロシマといえば人類が核兵器を初めて人類に向けて使ったことで世界的にも有名な都市だ。核兵器を使ったから荒野になってるかってそんなことはない。復興して100年以上経ってる。ヒロシマと、米海兵隊の基地があるイワクニの中間くらいにクガという工業都市があった。人口20万くらいの都市だ。これを読んでるのが日本人でもそんな土地を知ってるのは「あれ」以前ならまずいなかっただろう。


ヒロシマからもイワクニからも数十km離れているし、ミヤジマ島(厳島)の周辺以外に日本人以外がいることは滅多にない。トウキョウしか知らない人間には意外かもしれないが、「人より車が多い」というのはあの国ではよくある風景で、トウキョウのような雑踏というのはヒロシマまで行かないとまず見かけない。


そんな小さな都市の一角に、イベントがあるわけでもなく歩く人々が増え出した。石油化学コンビナートの各企業では無断欠勤者が急増していたが、内々のことなので他所に言う話でもなかった。記録上、無断欠勤者の急増が起きていたのはアフリカ封鎖2カ月前からだった。アフリカで起きてるのと同じ異常が目の前で起きてるなど想像できるわけがなかった。アフリカ封鎖の2日後、イワクニの海兵隊の一人が休暇で基地外に出たまま戻らず、通信端末の追跡を行なったところクガにいることが判明した。


犯罪の可能性があったため、イワクニのMPと日本警察(広島県警)の共同でクガの雑踏で兵士を捜索したところ、捜索者全員が音信不通になり、さらに2日後に雑踏を構成していることが確認された。

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