第22話 論功行賞
*
緒戦の勝利にダンジョンは沸いた。500体の魔物を殺害し、99体の魔物を生け捕りにすることに成功したのだ。こちらにはひとりの犠牲者も出さなかった。しかもバトルチーム焔とジェービーの5体だけでそれを成した。完全勝利といってもいいだろう。
さておれたちはさっそく
論功行賞が具体的にどんなものかというと、功績の大きい者から順に第1等~第3等の表彰をして、プラス特別賞1枠、サプライズとしておれの独断と偏見で選んだマスター特別賞が2枠の表彰をする。表彰された者は褒美をもらえる。褒美は本人の希望をなるべく叶える感じだ。
本当はダンジョン全員をこの場に集めたかったのだけど、戦争中に『配置を変える』を無駄打ちすることはできないので、とりあえず表彰対象が集中している第1階層におれが行って、論功行賞の様子をダンジョンのみんなにライブ配信することになった(詳細は省くが配信という機能があるのだ)。
論功行賞に参加しているものは、おれ、ジェービー、焔、レーナ、朱実、蜉蝣、それと第1階層のモンスターたち(狐のモンスター。数は9匹しかいない。戦力としては期待されておらずペット的な扱いを受けている)、それから第2階層のバトルチーム
みんなの功績を祝うために――みんな仲良しおれのダンジョン。
というのは嘘で、いつ敵が攻めてくるかわからない状態でおれが最前線の第1階層なんざに行ったもんだから、護衛のためにアリスが手を回して第2階層のバトルチームを派遣したのだった。
ちなみにバトルチーム小夜はその名の通り
「それでは論功行賞を始める」
論功行賞の詳細は以下の通り。
○論功行賞
・第一等:ジェービー
敵ダンジョンの侵入に成功し情報収集を行った。敵の幹部級モンスターに擬態し敵軍599体をダンジョンへと扇動、そのすべてを単独で行った。
「どんどん掻き回すよ」
褒美:焔に擬態できる権利
・第二等:
侵入した敵600体のうち500体を卓越した武術で殺害した。
「殺しすぎて焔様に怒られました」
褒美:プライベートルーム
・第三等:
侵入した敵600体のうち99体を卓越した武術で生け捕りにした。
「魔法使いへの対応の甘さを焔様に怒られました」
褒美:カフェ
・特別賞:
バトルチームを育成・指揮し勝利に導いた。《学習》のスキルを用いて多くの《
「敵が弱すぎて出番がなかった」
褒美:外に出る権利
・マスター特別賞:アリス
ジェービーが得た情報を用いて悪魔のような作戦を考案し、敵陣営に多大な損失を与えた。
「どうでもいい。忙しくて死にそう」
褒美:人員増強
・マスター特別賞:レーナ
ひとりだけ褒美がないのはかわいそうだから。
「……辞退できないんですか」
褒美:保留
皆、喜んでくれたようだった。表彰が終わるとパチ……パチ……パチ……とまばらな拍手が鳴った。素晴らしい表彰式だった。
(はい論功行賞は終わりです。できる限り速やかに褒美の履行をお願いします。それからダンジョンの配置転換を行います。第2層の面々はそのまま第1階層に待機してください)
アリスの無慈悲な≪念話≫が楽しい表彰式の終わりを告げる。
「それじゃ焔、擬態させてね!」
「いやじゃなあ……」
焔がジェービーに飲み込まれまいと触手を出して抗っているが、そこはマスター命令で従ってもらった。焔はジェービーに飲み込まれ、3秒くらいで出てきた。
「穢れてもうた……」
「ごちそうさま」
焔そっくりに擬態したジェービー。触手も自在に動かせるみたいだ。ジェービーはダンジョン最強の焔に擬態してみたかったようだけど、強すぎて諦めていたみたい。今回はその夢がかなったというわけだ。
「よかったねジェービー」
「うん!」
ジェービーが夢をかなえたそのあとで、第1階層の端っこのほうのあんまり邪魔にならないところにプライベートルームとカフェを適当に作った。カフェはガワしかないけど雰囲気はそれっぽい……朱実と蜉蝣はたいそう喜んだ。
「そんならウチは外に出てもええんか?」
ワクワクしている焔。
(それはちょっと待ってもらえますか焔)
しかしアリスは無情にも焔を制した。
「いやじゃあ! ウチは外にでるんや……」
(作戦があるのですよ……よく聞いてくださいね。焔。それから
「
「あら焔、私に不満でもあるの?」
そう答えたのはバトルチーム小夜のリーダー小夜である。焔に匹敵する強さを誇るモンスターである。焔と同じく黒髪で衣装もセーラー服なので焔とビジュアルが完全にかぶってしまっている。完全に別人なのに姉妹のように似ているのだ。焔に狐耳がなかったら2Pカラーとか言われていたかもしれない。違いがあるとすれば、小夜は拳にバンテージを巻いて腰に刀を提げている。
(これより5時間後、捕らえた捕虜1名を外に開放します。もちろん
「96時間も小夜たちと一緒におるの!?」
「仲良くしましょうよ」
焔は小夜に対する不信感を隠さない。
(96時間敵の侵入がなかった場合、マスターが『階層を外へ』広げます。焔と小夜はバトルチームを率いてダンジョンの外へ。間違いなく敵の襲撃に合うでしょう。それを迎撃してください)
「小夜らと一緒に戦うんか!?」
「そんなに嫌がらなくてもいいじゃない」
(これは敵の対処能力をみるための威力偵察です。この作戦はあなた達のチームを同時運用するのが最も効率がよいと判断しています。なるべく協力してください。以上。マスターは配置を変えるのクールタイムが明けたら速やかに情報室へ戻るように)
ブツンと念話が途切れる。なんか険悪な雰囲気が漂っていていやだ。小夜も焔も強いから折り合いがわるいんだろうなあ。
なんでもこなせる焔はハイレベルなオールラウンダー。戦闘だけでなく様々な場面で力を発揮できる。それは言い換えれば何でもできる代わりに突出した強さはないともいえる。対して小夜はほとんど戦闘に特化した能力を持っている。戦ったらどっちが勝つかはわからないけど、ダンジョン最強を自負する焔でも小夜と戦ったら負けるかもしれない。
とにかく二人は拮抗している。
ただ焔なら……そんな実力を持った小夜を認めることができるはず。それができないのはなぜなのか。
考えているうちにバトルチーム焔のメンバーたちが小夜に挨拶を始める。
「小夜様、よろしくおねがいしまし!」
「第二等の朱実さん、よろしく。みごとな弓のウデマエでしたわ」
朱実の挨拶に小夜はおっとり応じる。
「小夜様、よろしくお願いします」
「第三等の蜉蝣さん、よろしく。あなたのスピード、私と同じくらいかもしれないわ」
蜉蝣の挨拶にも小夜はおっとり応じた。
「よろしくね、小夜」
「”様”をつけろッ、マスター特別賞ッ!!」
小夜がぶちぎれた。沸点がわからない人って怖い……。
「……」
レーナは何も言い返さない。その代わり怯えた様子も見せてはいないが。
「おっと失礼レーナさん……私、弱い人にはどうにもあたりがきつくて……」
「やめろよ小夜」
おれが言うと、小夜は「失礼いたしました」と取り繕った。
「あんたのそういうところが好きになれんのや……小夜」
「あらそうなの? 焔も本音は一緒でしょ……私たち似たもの同士ですもの。足を引っ張られて本当は迷惑してるんじゃないの?」
「小夜……あんたには見る目がない……レーナは強いぞ……」
「フフ……レーナさんが本当に強いなら……感じるはずだわ……でもレーナさんには何も感じないの……」
5時間後、捕虜の一人がダンジョンの外に開放された。焔たちと小夜たちは96時間の待機時間をバチバチしながら過ごすのだろうか。
〇バトルチーム「
【チームリーダー】
名 前:
種 族:高速吸血侍
スキル:≪絶対・斬≫、≪超速再生≫、≪武術適正:S≫、≪気配探知≫、≪脅威察知≫、≪魔力感知≫、≪世界召喚:夜想曲≫、≪魔剣召喚:千夜一夜≫、≪斬撃召喚:究極・斬≫
適 正:≪武術適正:S≫、≪魔法適正:A≫
属 性:≪竜属性:S≫、≪標属性:A≫
好な物:強者
見た目:セーラー服
取得費:10,000,000,000ポイント(推定)
【サブリーダー】
名 前:
種 族:牡丹灯籠
スキル:≪壁泳≫
適 正:≪武術特性:B≫、≪魔法適正:A≫
属 性:≪幽属性:A≫、≪妖属性:B≫
好な物:のぞき
見た目:白いワンピース
取得費:1,000,000,000ポイント(推定)
【採取担当】
名 前:エトール
種 族:グリードスクアー
スキル:≪収納≫
適 正:≪武術適正:A≫、≪魔法適正:B≫
属 性:≪火属性:B≫、≪電属性:B≫
好な物:レアメタル、宝石
見た目:ランドセル
取得費:500,000,000ポイント(推定)
【地図担当】
名 前:リンドウ
種 族:バトルエルフ
スキル:≪地図作成:広≫、
適 正:≪武術適正:B≫、≪魔法適正:A≫
属 性:≪草属性:A≫、≪闘属性:C≫
好な物:地形
見た目:体操服
取得費:500,000,000ポイント(推定)
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