第18話 1か月後
バアルと戦争状態になってからおよそ一か月が経過しようとしている。
おれたちのダンジョンの整備はずいぶん進んだ。ダンジョンをめぐる状況もずいぶん変わった。
とりあえず情報機関について報告しておこう。
情報機関は50階層に設置した。おれが目覚めた部屋の隣だ。情報機関には収集した情報を集積し解析し、それをもとに作戦を考えるのが得意なモンスターを配置している。
在籍モンスターは以下の通り。
〇情報機関一覧≪4名≫
【情報機関長・情報集積担当】
名 前:アリス
種 族:戦魔女
スキル:≪絶対記憶≫、≪思考加速≫、≪並列思考≫
適 正:≪武術適正:C≫、≪魔法適正:B≫
属 性:≪超属性:C≫、≪風属性:C≫
好な物:お酒、タバコ
見た目:美魔女
取得費:2,000,000,000ポイント(推定)
【情報収集担当】
名 前:ジェービー
種 族:ドッペルゲンガーデビルスライム
スキル:≪擬態≫、≪分裂・同化≫、≪念話≫
適 正:≪武術適正:A≫、≪魔法適正:B≫
属 性:≪水属性:A≫、≪悪属性:D≫
好な物:美人
見た目:スク水少女
取得費:1,000,000,000ポイント(推定)
【情報収集担当】
名 前:
種 族:サトリ
スキル:≪読心≫、≪メンタルガード≫、≪マインドダイブ≫
適 正:≪武術適正:E≫、≪魔法適正:C≫
属 性:≪悪属性:B≫、≪超属性:B≫
好な物:古い本
見た目:文学系眼鏡女子
取得費:1,000,000,000ポイント(推定)
【情報機関長補佐】
名 前:シバ
種 族:朧車椅子
スキル:≪思考強化≫、≪思考共有≫、≪思考出力≫
適 正:≪武術適正:E≫、≪魔法適正:D≫
属 性:≪草属性:A≫、≪闘属性:C≫
好な物:尻
見た目:車椅子
取得費:3,000,000,000ポイント(推定)
情報室は人数こそ少ないがジェービーの分裂で補うこととなった。全員が3つのスキルを持っておりかなり高性能なモンスターたちだ。当然たくさんのポイントを使った。現在彼らはジェービーの持つ大量の情報を分析している。またダンジョン運営に関するルールを把握するために、おれやレーナが呼び出されることもあるし、あと≪鑑定≫を利用するために焔の力を借りることもあるみたい。
アリスの記憶力と判断力、ジェービーと弥生の情報収集力、そしてシバは彼らの力を何倍にも引き上げることができる。
シバはみためは車椅子の形をしたモンスターだ。座った者の思考力を強化することができる。そして≪思考共有≫≪思考出力≫という共有ディスプレイのような能力をもっているので、情報伝達がずいぶん楽になった。
例えば焔をシバに座らせれば焔の≪鑑定≫の結果をダンジョンのメンバー全員が視ることができるといった具合に使える。普段はアリスや弥生が座ることが多いようだ。
情報室のおかげでずいぶん楽になった。一番恩恵を受けたのはレーナかな。レーナのダンジョンに関する知識をアリスがすべて記憶してくれたのでレーナの負担はすごく減った。
わからないことはアリスに聞けば良くなったし、ダンジョン運営のこともアリスが考えてくれている。最近のおれはほとんど情報室に入りびたりだ。特にアリスと話す時間が増えている。なんせ50階層分のダンジョンを敵が来るまでに構築しないといけないからなかなか忙しいのだ。次元ネットワークを情報室が使うときなどはおれがいないと操作ができないので、いかんせん情報室から離れられない。
だからレーナとすごす時間は減った。
レーナは焔といることが多くなった。焔の戦闘訓練を受けているのだ。焔が教えるのが上手いのと、訓練の効率を最大まで引き上げるための工夫をしたかのと、あとはレーナ自身の才能と努力が実を結び、1か月の訓練でずいぶん強くなってしまったらしい。まったく戦えなかったというのにすごい成長だ。
おれはというと大して成長していない。アリスによれば1日あたり4個のペースでカーソルの数が増えているらしいのだが、それを成長と呼んでよいのだろうか。
まあいい。戦争を宣言されてから一か月が経ったがバアルがおれたちのダンジョンを攻めてくることは一度もなかった。だからおれたちはポイントを獲得することができなかった。
アリスによればこれがバアルの戦略らしい。1か月間ポイントを獲得することができなかったダンジョンに課せられるペナルティ。
『1か月縛り』
その期限があと5分後に迫っていた。
1か月縛りがどういうものかというと、条件を達成できなかったダンジョンマスターのもとに次元ネットワークから刺客が送られるというもの。刺客の転送位置はダンジョンのどこか……とはいえおれをピンポイントで殺しにくる可能性が高い。例えばおれの背後とかに刺客が送られたら非常に困る。おれは戦うことができないからだ。
「ファーリス様は手筈通り、焔様の元へと移動してください」
「わかった。アリス」
黒のローブに身をつつんだアリスは感情を表に出すことなく言った。いつもどことなく悲しそうな顔をしていて、笑った顔を見たことがない。生気のない顔に赤い瞳だけがギラギラと燃えるように輝いて、見ていると引き込まれそうになる不思議な印象をもったモンスターだった。
「いってくる」
「お気をつけて……」
おれはダンジョン管理システムを起動し、焔のいる第1階層へと『配置を変える』で移動した。一瞬で景色が入れ替わり……
*
秋の紅葉を思わせる背景に真っ赤な鳥居がいくつも立ち並んでいる。ぽつぽつと浮かぶ紫色の火の玉が浮かび、周囲をぼんやりと照らしている。
第1階層。ここはバアルとの戦争の最前線である。通常第1階層には弱めのモンスターを配置するのが定石だが、今回に限っては事情が違う。第1階層にこそ最大の戦力を配置すべきなのだ。よってこの1カ月間、焔がこの階層を離れることはなかった。
そして。焔がもっとも戦闘能力を発揮できるように、この階層には焔が得意とする鳥居稲荷世界の魔法体系≪巫術≫が使えるように環境を整備している。鳥居稲荷世界から『魔力』を買って階層に充満させるわけだが、これすごい維持費がかかるらしく、普段はオフにしている。もちろん今日はオンだ。
「きたかマスター……なんやひさしぶりやな」
話しかけてきたセーラー服の美少女はダンジョン最強のモンスター焔。焔の頭には狐耳がでている。鳥居稲荷の環境になっているので姿が変わっているのだ。
「ひさしぶり焔、どう調子は」
「当然絶好調や……みんなあんたに会いたがっておったぞ……特にレーナが」
「そうかレーナは元気か」
「今のレーナ見たら驚くで……」
前まではレーナ様と呼んでいたのにいつの間にか「様」が取れている。
「マスター!」
レーナの声だ。振り返ると、そこにはボロボロのメイド服を着たレーナがいた。長かった髪の毛も短くなって今はボブになっている。かわいい。
「かわいい」
「え?」
「え、あ、ごめん。久しぶりレーナ。髪型かわいい」
「あ、ありがとうございます……マスターもアリスたちとうまくやれてますか?」
「え?」
えっちなことはまだ何もやれてない……というか忙しくてそんなことしている暇がないということではなくて、
「ああ、うん。うまくやれてるよ。もう10階層まで整備が終わった」
いまのおれのダンジョンには焔クラスのモンスターもちらほらいる。いくらバアルが強くても攻略するのは難しいはずだ。
「そうですか……それならよかった。わたし今でもマスターが困ってないか心配で」
「まだ心配してくれてるの?」
「もちろんです! でも今はアリスたちがいるので。わたしは焔と頑張ってますよ」
レーナは嬉しそうに笑った。なんだかんだやりがいあるんだろうな……。
「おっと再会を喜ぶのはそこまでや……そろそろ時間やでふたりとも」
「うん!」
「マスターはウチのそばに」
「わかった」
「空海絶甲、新古狐火、攻防対信、炎氷月日……」
呪文を唱え焔が手印を結ぶ。おれを中心に光の幕のようなものが広がっていく。
「巫術:≪遮空結界≫……これで大体の攻撃は防げるからな……さあ刺客のお出ましや!! ええなレーナ!」
「うん! 危なくなったら合図するからみんなも援護して!」
「「はい!」」
〇バトルチーム「
【チームリーダー】
名 前:
種 族:九九九,九九九,九九九尾の狐
スキル:≪鑑定≫、≪武術適正:S≫、≪魔法適正:S≫、≪模倣≫、≪学習≫、≪狐火≫、≪世界召喚:鳥居稲荷≫、≪式神召喚:加具土命・火産神≫、≪魔剣召喚:九枝刀≫
適 正:≪武術適正:S≫、≪魔法適正:S≫
属 性:≪火属性:S≫、≪妖属性:S≫
好な物:武術、魔法
見た目:セーラー服
取得費:10,000,000,000ポイント(推定)
【サブリーダー】
名 前:レーナ
種 族:ポイント管理ヘルプアシスタントシステム
スキル:≪念話≫
適 正:≪武術特性:D≫、≪魔法適正:A≫
属 性:≪草属性:A≫、≪鋼属性:A≫
好な物:役に立つこと
見た目:メイド風エプロンドレス
取得費:0ポイント(推定)
【遠距離攻撃担当】
名 前:
種 族:ラクシュミ
スキル:≪豊穣≫
適 正:≪武術適正:A≫、≪魔法適正:B≫
属 性:≪地属性:A≫、≪水属性:B≫
好な物:NTR
見た目:むっちりシスター
取得費:500,000,000ポイント(推定)
【攪乱担当】
名 前:
種 族:雪影忍
スキル:≪朧≫
適 正:≪武術適正:B≫、≪魔法適正:A≫
属 性:≪風属性:A≫、≪氷属性:B≫
好な物:NTR
見た目:網タイツハイレグ忍者
取得費:500,000,000ポイント(推定)
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