第22話



 「ケンスケ。そこらへんにしといたほうがいいぞ?」


 「あぁ!?」


 「あぁ、じゃなくて、カズが嫌がってるだろ」



 ケンスケは顰めっ面のまま、ズカズカと私の方に歩み寄ってきた。


 俺に喧嘩売ってんのか?


 そう言って、背の低い私のことを見下ろす。



 聞こえなかったようだから、もう一度促した。


 そしたら、バッと片手で突き飛ばされ。



 「女子だからって容赦しねーぞ、俺は」



 まさかの展開にビックリしてしまった。


 突き飛ばされるとは思わなかった。


 …と言うより



 「大丈夫ですか?!お嬢様」



 …大丈夫なわけがないだろ



 私の…



 私の…



 抹茶フラペチーノが!!!!!!!




 「俺はケンスケに用があるんだ。こっちが終わったら次はお前だ」


 「…待て」


 「あぁ??」


 「どうしてくれるんだ?」


 「どうするって、何を?」


 「この“惨状”をだ。見えないか?この状況が」



 ちょっとやそっとのことじゃ私も腹が立たないが、突然起きた現実を直視できなかった。


 まだ半分しか飲んでなかった。


 しかも、“グランデ”だぞ?


 500円以上もする至高品が、地面にこぼれてしまったのだ。


 カップから飛び出した緑色の液体が、修復不可能な惨状を物語っていた。

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