第19話


 カズはいつも弱虫だった。



 根っからの“いくじなし”とは、彼のことを指す。



 彼は学校で、「いじめられる側」のポジションに立っていた。



 誰かの前で自分の意見を言うこともできず、全般的に能力値が低かったために、いじめられる「対象」になるのも無理はなかった。



 それはさながら、「自然の摂理」に近いものだっただろう。



 「オレが最強」的なやつに目をつけられるのは当然で、いとも簡単に弱肉強食の図が完成する。



 『弱者』はもちろんカズだ。



 彼は、食物連鎖のいちばん底辺に該当していた。



 私ですら、カズよりは上の位に位置していると思ってしまうくらいだった。



 カズはケンスケたちの登場を快く思っていなかった。



 当然だ。



 この時の彼は、ケンスケたちから下僕のような扱いを受けていたのだから。



 「おいカズ。オレ様は喉が渇いたんだが」



 その言葉にはさすがに、私も驚いた。



 突然何を言い出すのかと思った。



 喉が渇いた…?



 そんな事情、いちいち外に発信する必要はないだろう。



 それにな、ケンスケ。



 今は私がコイツと話してるんだ。



 割り込まないでくれるか?



 …そう言おうとしたが、後ろからカズの声が聞こえたため、静止せざるを得なかった。


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