第16話



 「…くだらない」



 それは至極当然な解答だった。



 第一印象、隠キャ。



 まるで絵に描いたようなガキで、色白のゲーム好きオタク。



 今風に言えば、そういう言い方になるのだろうか。



 少なくとも私は、「カズ」に対してろくな第一印象を持てなかった。



 最初に出会った瞬間に、直感で思ったのだ。



 コイツは「やばい」と。




 そんな私の感情とは裏腹に、カズは私以上に驚いた表情のまま、奇妙な視線を向けてきた。



 なんでカエルと一緒にいるの?と、彼は聞いてきたのだ。



 すごく、神妙な面持ちで。



 「……えっと……」



 私はそれに答えなかった。



 答えなかったというよりも、答えを濁したと言った方が正しい。



 話すまでもないことだったし、話したところで、所詮は意味のない会話になってしまうと思ったからだ。



 小学生になる頃には、世間で言う「常識」を、私はある程度弁えていた。



 普通の子供は、カエルと会話はしない。



 カエルを連れて歩くなんてこともしない。



 年相応の可愛い服を着て、学校に行き、宿題をしたり運動をしたり。



 学校では友達を作って、女の子らしい遊びをする。



 ランドセルを背負い、登下校の道をみんなと歩いて、日が沈むまでにちゃんと家に帰ること。



 カエルとサリエルに教えられたこの「ルール」は、私がこの世界で生きていけるように植え付けられた「知識」だった。



 だから下手なことは話せないと思ったのだ。



 『私は普通の女の子だ』



 と、胸を張って言えるように。


 

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