第14話



 カズが言うには、私たちが最初に出会ったのは、小学校の入学式の時だった。



 お互いに同じ学校に入っていたのだが、そのことに私は気づいていなかった。



 とはいえ、このスタバで知り合ってからは、ほとんど毎日のようにつるんできた。



 だからカズは、私にとっては筋金入りの幼馴染だ。



 そう言うとあまり良い気はしないが、カズのことなら何でも知っている。



 横浜Fマリノスの大ファンで、なんちゃってサッカー部員。


 くせ毛の多い天パに、大の梅干し嫌い。


 実家が八百屋のくせに、食べれる野菜がブロッコリーだけ。


 ジェットコースターが苦手で、大の人見知り。



 特徴を挙げればキリがないが、一番の傑作は、「女子」との免疫力がほとんど皆無だと言う点だ。



 理由はわからないが、私からすれば、それはとんでもなく失礼な話になる。


 

 私だって「女子」であるにもかかわらず…、だ。



 そのことを厳しく聞いてやると、本人も首を傾げて困った顔をするから、余計にタチが悪い。




 カズは当時よく同級生にいじめられていた。



 黒縁の大きなメガネをかけ、ゲームにばかり勤しみ、生まれながらに全く外に出ないインドア派=コミュ障だったことが、理由のひとつだ。



 体調が悪いという理由で学校にもろくに行かず、たまに行ったかと思えば、保健室に入り浸る日々。



 しかも一人っ子で、育ちがボンボンだった。



 甘えに甘やかされ育ってきた結果、ガラが悪い学校内の輩から標的になったわけだ。



 カズは、顔がアザだらけになりながら横浜の海を眺めていた。



 その様子を最初に目にしたのは、スタバの抹茶フラペチーノを頬張りながら公園の中を散策していた時だ。



 当時昆虫採取にハマっていた私は、そこらじゅうに生えている木という木を漁って、史上最も美しい『ミヤマクワガタ』を発見しようと躍起になっている夏休みの真っ只中だった。



 身丈に合わないデカすぎる麦わら帽子を被り、日陰の芝生の上に寝転がっていたカズは、ニンテンドーDSにかじりつきながら1人奇声を発していた。



 やばい状況に出くわしたと思った私は、カエルを呼び出して警察を呼ぶよう促した。



 呆気に取られている私の横で、カエルに話しかけている私を見ながら、「ウワッ!!」という大声を上げてカズはその場に硬直していた。



 カズは爬虫類や両生類が大の苦手だったのだ。

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