第5話チョベリバ!



物事にはテンプレというものがある。敵が来たと思って振り返ったら猫だったり、一目散に1人で逃げる奴は最初の犠牲者になったりと、お約束がある。


ただ、だからと言って必ず起こらなきゃ行けないわけじゃないと思うんだよね。


こんなふうに盗賊に囲まれるなんてさ。


「ゲヘヘヘ、どうしますか?兄貴」


盗賊に囲まれた。数は多い部屋に隠れているやつもいると思うけど囲んでいるやつだけで30人はいる。


力を試すにしても、少しは場を整えないと。


「ご主人様、如何なさいますか?撤退は無理そうです」


でしょうね。こんなに用意周到に俺達を罠にはめたんだ。撤退なんて甘い手を許してくれるはずは無い。そうだとすれば先手必勝しかない!


この棍棒を使う事になるとはね、心もとないな。ドラ〇エの人達はどうやって戦ったんだが。


「ゲヘヘヘ、そんな棍棒でどうしろって言うんだ?大人しく投降したら可愛がってやるよ」


絶対嫌だ。


「お断りします。私には夢がありますので。」


夢は今のところはないけど未来よ未来。とりあえず世界が見たいかな。王女をいつまでも仲間にする訳には行かないし、とりあえずユーロの国へ行きたいな。


「じゃあ死ね、あばよ」


盗賊はジャンプして俺に突進してきた。


「シロ、私の後ろに! はぁ! ……グッ!」


くそ、やはり俺自身の力が弱い。あちらに分がある!


それにしても斬術はどう使うんだ?あの時貰ったよな?


【斬術は剣の時のみ使えます。棍棒では使えません。】


頭の中に声が響いた。ってか、はぁ!?使えないの?あの神ふざけんなよ、なんで棍棒を渡すんだよ。

今どきは剣なんだよ、最初から、仕方ない。

てかなんで俺に話しかけてんだ。さっさとビア〇カ救ってこい!


「シロ、敵は私が引き付けます。あなたは剣を持ってきてください、私が扱えるぐらいの」


「了解しました。ご主人様、直ぐに用意します。

えーと…小さいの小さいの。」


シロは一目散に動いて行った。後せめて頭の中で探してくれ。

行動が早い部下は好きだよ。さて、こちらも頑張ろうか、、さっきからスカートがめくり上がりそうで怖い。長いのにしたいな。


「ゲヘヘヘ!!仲間は逃げたな。最低なヤツらだな。」


逃げた? 何を言っている。どこをどう見たらそうなるのか?


てか───


「私のお供を馬鹿にするのは辞めてください。」


「ゲヘヘヘ!!」


「お仕置が必要なようですね!はぁー!!!」


二人の剣がまた衝突した。

舞台は変わり、シロも走る。


「ご主人様今お待ちを!ッ」


シロの目の前に盗賊が何人も出てくる。


遠目から見てたけどナイフ舐めているやつとかもいる。


大丈夫かな?うぉ!吹き矢もあるのね!


「どけー!」


シロはただの突進で盗賊を吹き飛ばしている。あっ、大丈夫だわ。心配しなくても銃弾みたいに進んでいる。


どちらかと言えば心配なのは上に乗ってるユーロのだな。気絶しているとはいえ、ぐわんぐわん揺れて顔が青ざめてきている。吐くのだけはやめてくれ。俺も座るんだからそこ。


「よそ見とは随分と余裕だな。」


あっぶね!いつの間にか盗賊のナイフが俺の首元に近づいていた。間一髪棍棒を降って防いだけど、あと少し遅れていたら首と体がお別れしていたかもな。


さてこっちに集中しますか!



シロは叫ぶ。知っているのだ。自分一人では剣を回収できないと、ここは自分のプライドより成果を重視するべきだと。


「ユーロ様起きて下さい!」


「う……。は、はい、シロさん。どうしました?ってギャーなんですか、これ」




「今説明している暇はありません、私に捕まってください」


は、はいと、ユーロはシロの背中に捕まって風圧に耐える。シロの全力疾走は凄まじく両手でしがみついてないと直ぐに吹き飛ばされてしまう。

シロは方向転換して盗賊たちを引き剥がす。全ては主のために。柵を吹き飛ばし、そのまま家に向かう。


邪魔だ、私の、いや、ご主人様の覇道の邪魔をするな」


その咆哮は盗賊の戦意を削ぐには十分だった。

後覇道って何? 別に世界の魔王になるつもりは無いよ。

だが、俺と盗賊の頭の戦いは更に勢いを増す。


「このクソガキー!!」


遅い。もうこいつのスピードには慣れた。だがやはり経験がものを言っている。慣れたからこそ隙が見つからない。どうするか。


ちょっと煽ってみるか。


「どうしました? 先程までの余裕が嘘のようにないですが。もしかして本気になってます?」


「だ、まれぇぇーーー!」


さぁ空中戦の始まりだ、木の上に飛ぶぞ、幸いここの木は大きく枝も丈夫で渡るにはもってこいだ!


「待て! クソガキ!」


クソガキ、クソガキうるせぇな! そんな余裕を噛ましてて良いのかい? 身体がちっちゃいから動くのも楽だ。

横に盗賊が現れた。まぁ、そりゃあここは君の庭だろうから来るとは思っていたけどさw


「あなたが木に登ると猿みたいですねww」


俺ナイス煽り! あっ、血管が浮きだってきた。もうちょいかな、さぁて第2ラウンドの始まりだ。


そして、俺はそのまま木を渡り続ける。


「煽ってんのに逃げんのか、クソガキ!」


気にしない気にしない、煽りというのは短期だから怒ってしまうのだ。それから、うるせぇんだよ! さっきからクソガキってよ!

これでも喰らえと俺は枝を切り落とし盗賊に投付ける。

もちろん効くはずがない。


「こんなに逃げて出した手がこれか、笑わせるな!」


その時盗賊は目を見開く。

(いねぇ!あの糞ガキどこに行った!)

盗賊の油断と枝のおかげで俺は姿を消した。


「と、でも思ったか?クソガキ 分かってんだよ、その木の後ろにいるのはな」


見えているのだ。頭隠して尻隠さずという言葉後にあっている。頭は隠れているが体が入っていなかった。

そして盗賊のナイフが入る。


【ガン!】


盗賊は感覚でわかる。

(俺は何を斬った?肉の感触じゃねぇ。一体何が。っ!これは棍棒!!)


今更分かったか?そう、俺は棍棒を木の影において置いたのさ。そして俺は今上にいる。何をするかもうわかるだろう?

上から、飛び降りて重さ×速さ×重力の一撃をお見舞いだ!喰らえ、パーンチ!


見事ヒット、手応えあり!

「グオォォォ!」と盗賊はそのまま落ちていった。

いいね。かませ犬らしからぬいい声だったぞ!


俺は下に落ちて確認する。スカートを下に引っ張って。面倒臭いね女って。

見るとクレーターが出来ている。隕石が落ちたみたいだ。


「はぁ、はぁ、クソガキィィ!!」


まだ生きてるよ。怖いな。今すぐにでもベットで寝たいだろうに。

一応降伏を進めるか。


「あなたのケガではもう私には勝てません。諦めなさい。」

こういうセリフ憧れるよね。鎧来てるんだから騎士のモノマネをしたっていいはずだ。


「舐めやがって、てめぇら。もう容赦はいらねぇ、全員でぶっ殺すぞ! こいつはここで殺らなくちゃいけねぇ!」


「「「ヘイ! 兄貴!」」」


うわ! なんか蟻みたいにぞろぞろ出てきた。

こんなに隠れていたのか? 普通に100人ぐらいいるぞ。棍棒ももう無いし、これはちょっと困っt


「ご主人様! これを、」


シロが口に加えてた剣を俺に投げる。それは回転をして目の前に刺さった。待ってたよ。その剣を!

俺は剣を抜く。それは輝き出した。太陽など届かない霧の中でそれは光り続ける。まるで太陽を食べたかのように。


「ゲヘヘヘ、剣に変えたところで何が変わる、細くなっただけだそ。」


そう、本質は何も変わらない。ただ剣である。

お前たちは刮目する。その剣に変えたやつに吹き飛ばされるんだからね!


「行きます、くらえぇ! 名前思いつかないから、エクスカリバー!!!」


俺は剣を振る。その瞬間剣の軌道に光が流れそこから衝撃波が生まれる。それは波のように盗賊達の前に流れ全てを吹き飛ばした。


「ギャァァァ!!!」


その日、樹海に光が現れる。遠くからの町からでも見えるもので怪奇現象と呼ばれ後に語り継がれた。




光は消え。後に残るのは砂煙と静寂。

それを見ていたシロは圧倒されていた。


(なんだ。この威力は、ただ剣を降っただけで。

お、恐ろしいな。味方にいてこれ程心強いものは無いが、もし主が敵になったら……)


シロは背中に寒気が走る。考えてはいけないことなのだ。

すぐさまクスノキの所へ向かう。


「ご主人様、ご主人様。どこへ行きました!? ご主人様!」


明らかに剣を振ったあとがある場所がある。だがそこには誰もいない。踏み込んだ土の後しかない。


「ご主人様、ご主人様、ユーロさんも降りて探してください」


「はい、クスノキさーん。どこですかー……この光って使えるかも」


ユーロも降りて探す。砂煙でそこまで見えないのだ。


「・・けて。たす・て。 シロ、ユーロ」


横から俺は声を出す。見て、いややっぱり見ないで欲しい。


「ご主人様! って。えっ?」


「ジロー! ユーロ! だずげでー! 泣」


俺は横にあった岩に上半身をめり込まれていた。

ちょっと危ない広告みたいになっている。


「ご主人様、今抜きます、ユーロさん。行きますよ!」


「はい! シロさん!」


ユーロは右足を持って シロは左足を噛んで引っ張る。


「ありがとうございます! 2人とも、って! 痛い痛い痛い! 取れちゃいます! 取れちゃいます! 」


石にヒビが入る。ビキビキと音を立てながら、少しづつ俺の体が出てくる。いや待って普通に本当に痛いんだけど。



「行けます、ご主人様。せーの、」


「ちょっと待って、1回落ち着きましょう! 押してダメなら引いてみろと、ほんとに取れちゃうー。」


【スポンっ!】


抜けた。3人は反動で後ろにぐるぐる転がった。

シロが回り込んでクッションになってくれたのでそこまで痛くなかった。


「ご主人様、ユーロ様、大丈夫ですか!?」


「大丈夫です。ありがとうございます。シロ」


木の幹に窪みが出来ている。 そんなに吹き飛んだのか。

ユーロも無事らしい。


「クスノキさん。シロさん。ここからどうすれば。キャッ!」


ユーロの叫びで俺とシロは振り替える。今どきそんな悲鳴出すやついるのか!? と心の中で思ったが黙っている。

忘れていた、テンプレと言うやつだ。

やったと思ったら大抵相手は生きているのだから。



「ゲヘヘヘ!!良くもやってくれたな!ガキ!だが終わりだ!こいつを殺されたくなかったら!投降しろ!」


テンプレに1番弱いやつを人質に取って威張るやつ。

だがこれが一番効果的だ。助けれる未来が見えない。私が剣で吹き飛ばせばユーロも吹き飛ぶと思うし、シロが噛めば閲覧注意になる。

こうなったら最後の手段だ!



「早くしろ、このガキが死んでもいいのか」


はいはい! わかったよ! 俺は剣を下ろす。


「そうだ、それでいい。まずはお前から」


と、見せかけて浄化ー! 手を振って懐中電灯みたいな光を盗賊とユーロに当てる。

もうどうにでもなれー!




、、、どうしてこうなった。


「クスノキさん、シロさん、ユーロさん、申し訳ありませんでした。もう我々は盗賊から足を洗います! こんな当たり前で大事な事にきづかせてくれてありがとうございます」


うーわ。目が眩しい、キラキラしてる。ピカピカの1年生だ。


【悪人なら改心をさせることが出来ます!】んな事も言ってたな。あの神。こんな分かりやすく変わるのか。洗脳兵器じゃん。手を振るだけで出せるから余計にタチが悪いな。

ま、まぁとりあえずあの盗賊は放っておいて、ユーロの様子を見に行こう。


「あ、あの。ユーロさん。大丈夫ですか? 浄化を何も言わずに当ててしまいすみません。お身体にはなんの影響もないですか?」


ユーロは黙ったまま、怒っているのかな?


「ちょべ」


ちょべ?


「ちょべり」


り?



「チョベリバよ! 何が起こったの? ウチ見てなかったけど光がバーときてめちゃ眩しかったんだけど! 面白すぎー! もっかいやろ!!」



どうなってんの?これ。

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