第3話 摩訶不思議な大冒険

「申し訳ございませんでしたー!!」


いやずっと謝ってる。オオカミが土下座のポーズしてずっと、謝ってる。なんか俺の方が心が痛い。

てかうるさい。音量下げろ、近所迷惑だ。


「あーうん。そんなに謝らなくてもいいよ。私も恨んでないしさ。ほら!両方生きているだから。ね?」


どうよ俺の気の利いた言い方は、

いや本当は1発ぐらい殴ってもいいんじゃないかと思う。ただあの風の刃が生まれたらまた真っ二つになってしまうかもしれないから躊躇しておいた。

それにしても我ながらナイスフォローだと思う。


「で、ですか。せめて、あなたの旅に同行させて下さい!あなたの敵を殺す牙になりましょう」

「いいです。他をお探しください」


敬語で話すことにより、さらに着いてきて欲しくないという意志をアピール。これで着いていくなんて言うのはKYぐらいしか居ない。



「いえ! 着いていきます、恩を返しさせてください」


KYだったわ。まじか。普通に君トラウマなんだよね。1000回以上も食べられた奴と旅なんかしたくないのよ、、そうだ───


「ほ、ほら、貴方にも家族や恋人なり守らなくちゃいけない人がいると思います。なので、お断りします」



我ながらいい文だ。君に責任は無いという俺の優しさもある。これなら。


「分かりました」


ほらね。済まない。主は他をあたりな。


「つまり家族がいなければついて行っていいのですね?」


ん? なんか違くない? カーナビ無視してる?



「分かりました。今すぐ家族を噛み殺してきます! ついでに恋人も! 直ぐに行ってくるのでお待ちを!」



待て待て待て! 違う!違うよ。

なんでそうなるの暴論だよ!悪魔もドン引くレベルの極論だよ! それで殺させる家族の身にもなれ!

まずい。こいつホントにかみ殺す気だ! 殺気が尋常じゃない、ほんとに殺す。後々家族が、恨みで夢とかに出られでもしたら、はた迷惑ってもんじゃない。

仕方ない───


「分かりました。一緒に行きましょう。あなたと旅をしたくなりました」


「本当ですか!?ありがとうございます、では私の事はシロとお呼びください!」


あーもう勝手に着いてこい。ドラ〇エの主人公ってこんな気持ちなのかな?仕方ない。

それにしてもシロか。毛皮は白いけどシロって名前じゃ、まぁこれ言うと泣きそうだから黙っておこう。

あちらが自己紹介したんだからコチラもするべきだ。


「私の名前はクスノキです。よろしくお願いします」


あれ?俺って敬語で話すタイプだったっけ?まぁいいや、敬語の方が話しやすいし。


「ではご主人様、私にお乗り下さい。このままこの森を進みましょう!」


シロが頭を下げている。背中に乗ってって事?ラクダスタイルなんだね。又裂けそうだけど。2mぐらいあるし

仕方ないので乗る。


【モフっ!】


おお!以外と乗り心地は良い、毛皮もフワッとしている。新品の絨毯みたいだ。


「では行きましょう、出発です」


こうして俺とシロの2人旅が始まった。


、、、暇なので話す。


「シロ、先程の私が聖者様というのはどういう事ですか?そういう役職では無いので」

「聖者とは役職ではありません。奇跡を起こせる者をまとめて聖者様と呼び、人々から崇拝される存在なのです」


聖者ねぇ、聖者が一番最初にやった事はオオカミを真っ二つにした事。どこが聖者なんだか、、聞いちゃいけないと思うけど聞かなきゃいけない質問がある。


「私を恨んでいないんですか?貴方を真っ二つにして殺したんですよ?私」


これは賭けだ。この質問の返答によってまた食われるかもしれない。直ぐに戦闘出来る準備を。


「何を言っておられるのですか? むしろ私は感謝してます。私は魔力暴走を起こしており自我もほとんど残っていませんでした。ですがご主人様が私を浄化してくれたお掛けで自我を取り戻すことが出来ました。家族に捨てられてから家族を恨んでおりましたが、今では感謝しています。

捨てられたから、今ご主人様と会えたのですから!」


うんうん。その言葉君じゃなかったら泣いていたかもな。俺の心には君の胃液の匂いがこびり付いているよ。


その時シロが止まる。鼻をスンスンと動かして。


「ご主人様 血の匂いがします」

「血ですか?」

「はい。あの小屋から」


シロの目線の先にはボロボロの一軒家があった。何かを隠すにはうってつけだが死体だと思う。

だが違うらしい。シロ曰く生きていると、まだ辛うじて息があると。


俺はシロから降りて小屋に向かう。

「ペギャ!」

転んだ。身長が半分ぐらいに縮んだから歩くのも一苦労だ。全く難儀な体だよ。


ドアノブには鍵が掛かっておらずそのまま入れた。

中はゴミだらけ。だがある一点だけ違和感がある。

血の匂いもそこからだ。明らかな凹みがある。何かを隠している証拠だ。

俺はそれを掘り起こした。



中には檻があり、黒い塊が入っている。


「フー、フー、 ブー、。」

かろうじて息をしている。


シロもあとから着いてくる。

「噛み殺しますか?」


やめろバカ。黙ってろ。


んー?ブラッ〇ジャックを、見ていれば治療可能だったかもしれないけど全然わからん。

とりあえず浄化当ててみるか。

手を振り光を出す。便利な力よ。もう三回目だからあと7回しか使えないんだけど。


あー光ってきた。始まった。目を開けられないほどの閃光の後に見えた物は。

「あれ?私なんで生きて。」

着物を着ている青髪の女性がでてきた。これは予想外。


「あの、助けてくれてあり────」


その女性は私の後にシロを見て。


「───────シルバーウルフ。ガクッ!」


また気絶してしまった。どっかの誰かの巨体のせいで。


「あ、あのご主人様、これは仕方の無いことで。」


おどおどしているシロを無視して俺は扉を閉めた。

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