冷凍睡眠(コールドスリープ)後編
「冷凍睡眠(コールドスリープ)解除しました」
無機質な声に続いて、カプセルの蓋が開いた。女は期待を胸にカプセルの外に出た。周囲は沢山の人で溢れている。無事に到着したことを喜び合う声が響くなか、女は係官の一人に呼ばれた。
「大変残念なお知らせです」
座るように促された女は首を傾げた。
「あなたの夫なのですが、冷凍睡眠(コールドスリープ)の事故で死亡されました」
女は手で口元を覆った。
「系外惑星への移民が始まってから、このような事故は初めです」
職務に忠実であろうとするのか、係官の言葉は冷静だった。
「御遺体は水も空気もない区画で長く放置されておりミイラ化が進んでいました。個人の同定にはDNA鑑定を必要としました。ご確認されますか」
女は、声もなく、口元を手で覆ったまま首を振った。
「移動中の事故です。直後に申し訳無いとは思うのですが」
新婚早々夫を失った女は、夫の死亡登録、事故の保証金の受け取りなど必要な事務手続きを気丈にもそのままやりとげ係官を感心させた。
新たな大地に降り立った女は、そっと自らの腹に触れた。
「よかった」
先程胎児の無事をきかされた。事故死した婚約者の子だ。
あの男と結婚したことは後悔しているが、事故の真相を知り決着をつけることができた。
「天国があるなら見守っていてね」
女は、婚約者だった愛おしい男のホログラムを見つめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます