知らない予定が入ってる (短編2編)

海堂 岬

冷凍睡眠(コールドスリープ)前編

 男は目を覚ました。

冷凍睡眠コールドスリープ解除しました」

無機質な声に、男は目的地に到着したことを知った。ようやっとだ。あれこれ手を尽くしようやく手に入れた新妻と、新天地に到着したのだ。


 人類は増えた。太陽系から溢れた人類が、系外惑星に移民を初めて随分になる。片道切符だが、人の一生の数倍を冷凍睡眠コールドスリープでやり過ごせば、待っているのは新天地だ。男も含めた多くの人類が、新天地を目指した。


 カプセルから出た男は首を傾げた。宇宙船内に規則正しく並ぶ他のカプセルからは、誰も出てこない。ヒトを、つまりは男を冷凍睡眠コールドスリープから覚醒させたというのに、空調も照明も何も起動していない。計器類がほのかに光るだけだ。


 おかしい。


 他の区画を見に行こうとした男は愕然とした。扉が開かない。男は扉の近くのカプセルをみて愕然とした。冷凍睡眠コールドスリープが解除されるまでの気の遠くなるほどの時間が提示されている。

「馬鹿な」

男はふらつく足で、先程まで自分が横たわっていたカプセルを確認した。表示時間はゼロだ。

「こんな予定じゃない! 邪魔者は消したのに!」

男の絶叫が区画の空気を振動させた。

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