第31話 してたかもだけど

「うぅ…つっかれたー…カナくん…だいじょうぶ?」


「あはは、なんとかね。でも栞ちゃんの言う通りだったよ、2度と行かないことにしよう、ああいうのは」


「でしょー…?前のときより、ひどかったけどさ?そもそもお酒がダメだと思うんだよねー…」


「とりあえず、一息入れようか。座ってて、栞ちゃん」


「ありがと…さすがにグッタリする…」


ようやく…

ようやくのお家だ。

お家ソファ最高。


お兄ちゃんが優勝…じゃなくて昇格?

したのは嬉しいけど。

やっぱりああいうのはダメ。

次からどんなことしても断ろう。


カナくんめっちゃ空飛んでたし。

つらそうだった、ほんと。

守れなくてごめんね、カナくん。

せっかくだから、写真はいただくけど。


「はい、ハーブディー。ちょっとオーナーに通話するよ、栞ちゃん」


「ありがとー。りょーかい…ちょっとズレるね」


ズルズルと移動する。

もう立ち上がる元気もない。

ふー…

ハーブティおいし。


「おつかれさまです、オーナー。今、大丈夫ですか?」


『ええ、こちらからも連絡しようと思っていたところよ…昇格おめでとう、カナタくん、栞さん』


…いるのバレてる?

カメラには入ってないはず。

とりあえず、黙っておこう。


「ありがとうございます…栞ちゃん?」


やっぱダメ?

えー…

オーナー怖いんだもん…


カナくんに背後から抱きついて。

顔だけ見えるようにする。


「おつかれさまです、オーナー。わたし、すごくヘロヘロです。すいません、そっとしといてください…」


『あらあら。ふふ、打ち上げの写真を見たから知っているけれど…本当にグッタリしていたものね?今日は無理せず、お休みなさい』


打ち上げの…写真?

たしかにカメラマンっぽい人はいた。

気がするけど…


「なんで、わたしの写真…あるんですか?」


『お願いしてあったのよ。栞さんとカナタくんの写真は…とくによく撮っておくようにって。あなたたち、普段は写真なんて撮らないそうじゃない…よかったらご両親に見せてあげてくれるかしら』


「え…お、おきづかい、ありがとうございます…」


なんて…いい人。

オーナーいい人だ!

仏壇にちゃんと飾ろうね、カナくん!


あれ?

でも、お兄ちゃんのは…?


『そんな心配そうな顔しないでも、レオくんの写真は、そうね…市の広報にも載ると思うし…試合にもプロのカメラマンが、たくさんいましたから。データを頂いたら、共有に入れておくことにします…だから、大丈夫よ?』


「「ありがとうございます」」


カナくんが頭を下げたから。

わたしの頭もつられて下がる。


あとで朝香にも教えてあげよ。

プロの写真とか、喜ぶに違いない。

カナくんのもいっぱいあるのかな?

楽しみだなー!


「カナくんのは飛んでる写真にする?」


「どう写ってるかは気になるけど…みんな気に入ってくれるかなぁ…」


色んな角度の、飛んでるカナくん。

たくさん置きたいかも。

うん、いいかもしれない。

わたしとお兄ちゃんのはちょっとにして。

カナくんのいっぱい飾っちゃおーっと!


『ふふ、写真はあとの楽しみにして…とりあえず仕事の話しを先にさせてちょうだい?』


仕事の話しなら、わたしいらないよね。

考えないといけないこと、あるし。

どうやったら…

お風呂時間も、カナくんとご一緒できるか。

真剣に考えるときだ。


「はい、お願いします」


『まずはクラファンの件ね…1度目は予定通り未達となりましたけれど、何か問題はなかったかしら?』


まず。

カナくんは鍵を掛けない。

浴室はノーガードだ。

だから突撃は簡単、なんだけど。


タオルだけで入っても。

カナくん、ふーんて感じなんだよね。

それもカナくんらしいけど。


わ、わたしはカナくんみて…

すっごく


「…栞ちゃん?」


え?

なに?

…呼んだ?


「なに…カナくん」


「クラファンの1回目、なにか問題はなかったか?って話しだよ、栞ちゃん。疲れてるなら、休んでる…?」


くらふぁん?

って、なんだっけ?

ダメだ。

頭の上の妄想を振り払って…

全裸のカナくんをめつっ!

で、えーっと…?


『ふふ。カナタくん、心配はいらないわ。栞さん、とってもすけべな顔をしていたから…たぶん、寝るに寝れないでしょうし。そういう顔、していたものね?』


「しししし、してないしてない!してなーい!オーナー!してません!カナくん!してないからね?してないよ!」


してたかもだけど!

してない!

あとすけべっていいかた、なんかやだ!


「う、うん。ぼくからは見えなかったから安心して、栞ちゃん」


それって、どっち!?

妄想してたか、してないか。

どう思ってるかが重要なんだよ!カナくん!


でも、このまま黙ってるわけには行かない。

話しを…進めなきゃ…

えーっと…


「こほん!えー…問題は、ありませんでした。2回目もー予定通り実施です!来年の春で終わってーえー…3回目が、夏から秋?です」


ふぅ…

あぶないあぶない。

カナくんのこと考えるの。

会議中はすごく危険。

うん。


…ん?

まさかこれも録画されてるの?

それはちょっと、まずくない?

こんぷらいあんすとかだよ。

たぶん。

わたしのこんぷらいあんす。


『ふふ、わかりました。2度目以降は、選手からの寄付分が減ることになるけれど…J1に到達したことで、最終的には増額になると見込んでいます。準備のほうはどうかしら?』


「はい!ちゃくちゃくと!」


あとで消せるようにしてもらわないと。

さすがにエッチな顔はヤバイでしょ。


でも…カナくんがどんな顔してたか。

ちょっと気になる?

それ見てからでも…?

遅くないってゆーか?


『まあ、素晴らしいわね。カナタくんも抜かりないように、お願いね?』


「はい、しっかり最後まで手伝います」


でもいまだにあの録画。

消すボタンって出てこないんだよね…

前のはもう、諦めてるけど。


いつでも消せるって安心感。

ほしいなー…

うーん…


『それと…J1から2選手、そちらに移籍させますから…そちらの監督もお願いできるかしら?』


「はい、それはもちろんです。あ、オーナー。こちらからも、移籍に関して1つ頼まれているのですが」


『ええ、なにかしら?』


「フォワードの佐藤選手が、こちらに戻りたいそうです。杵築さんもできたらそうして欲しいとのことでしたが…」


『わかりました。人事に伝えておきましょう…確約はできないけれど、ふふ。そちらは地元選手で固めた方が、効果も高いでしょうからね』


「ありがとうございます…でも、その2選手というのは?」


『ええ…地元はイギリスになるわね。知人に叱ってもらったから、ちゃんと言うことは聞くはずよ?』


「…はい、わかりました」


…いぎりす?

うわー…あのすっぽかしの!

イギリスの、イギリス語かー…

上手くやっていけるのかなー。

そういえば、


「カナくんは、イギリス語しゃべれるの?」


「…ぼくも、英語はさっぱりだよ、栞ちゃん」


『ええ、そちらは安心して?メディカルさんも一緒に付けることになっています。ああ…これは彼らに関係なく、メディカルさんの希望だから…カナタくんは、色々と教えてあげてちょうだいね?』


「…はい、わかりました」


『将来的には、といっても…シーズン中であっても、になるのかしら。J3からの選手の移動もある、と考えておいてくれると助かるわ…みんなの面倒、引き続きお願いね?カナタくん』


「はい、わかりました」


カナくんが。

わかりましたbotになってしまう。

そろそろ一緒にお風呂入りたい。


『以上ね、給与に関しては…また決まったら連絡をしますから。それじゃあ、おやすみなさい、2人とも』


「「おやすみなさい」」


ちゃんとカナくんが切るのを待って。


「給与って…なんだろ?」


「レオの給与じゃないかな?J1になるから、上がるんだと思うよ」


「えー…カナくんの給与だったりして?」


ふんいきてきには、そんな感じだったけど?

ちがうのかな?


「どうかな?ぼくのは1年契約で、もう支払い済だからね」


うーん…

お兄ちゃんの給料かー。

いくらになるんだろ?

1000万円?ってなったら。

え、すごいな…

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