第23話 幕間~レオ視点~
気づけばJ2のピッチに立っていた。
マジで気づけば、って感じだ。
4軍で1年近い研鑽は積んだ。
それ以前からも、努力は怠らなかった。
できるだけのこと全て。
サッカーにだけ注いできた。
だから、自信はあった。
ただ、この歳で?とも思った。
J2の若年層なんてのは。
ユースやアカデミー生の巣窟だ。
サッカーエリートたちしかいない。
そんなエリートの中ですら一握りの世界。
そこに、おれが?って。
わかりきってることだ。
そんなのカナタのおかげでしかない。
こんなマジックが使えるのは。
昔から世話になり続けてる。
カナタだけだ。
☆
生まれたころから一緒だった。
小学校にあがるころ。
カナタの両親が死んでからは。
うちでも一緒になった。
特に疑問にも思わなかった。
元々、兄弟みたいなもんだったから。
妹はあまりの嬉しさに漏らしてたが。
近所のサッカークラブに通いだして。
おれはサッカーに打ち込んだ。
純粋に面白かったから。
それを毎日のようにカナタに話して。
帰ってくる言葉は決まって。
とにかく、頭を使えだった。
そのころのカナタはとにかく。
ストーカー被害に頭を悩ませてたからな。
妹からの。
1日中、追い回されてた。
☆
中学にあがるころ。
何の因果か、うちの両親も事故死した。
多めの財産を残されたカナタと違って。
おれたち2人が進学して行くには。
心もとない金額だった。
おれのサッカーは、ここで終わり。
在学中はバイトして、卒業したら就職して。
つまんない人生の始まりかぁ…
と思ってたんだが。
妹が泣き喚いた。
どうしても旅館だけは残したいと。
もちろん、泣きつかれたのはカナタだ。
そこからは、あっという間。
気づいたら、旅館は残ってるし。
名義がおれになってるし。
妹は前にも増して、ストーカーだ。
カナタは少し金を出しただけ。
やってくれたのは弁護士さんたちで?
家事もやるし、妹の面倒もみるから。
サッカーもどうか続けてくれ、って。
どういうことか。
おれにはまったく理解できなかった。
ただ、サッカーを続けられること。
それだけを考えればいいってことを。
カナタに何度も言われて理解した。
妹が何度もドヤってくるのには。
心底イラっとしたが。
☆
それからも頭を使い続けて。
気づけば、ここまできてる。
おれは今も、サッカーのことだけでいい。
それ以外の全ては、カナタがやってくれてる。
とにかく。
とにかくだ。
カナタは、おれたちの、恩人だ。
だから、毎度。
妹の行動には呆れるしかない。
何度、迷惑かけたら気が済むんだ?あいつは。
中3あたりから慣れない敬語使い始めて。
急に距離を置かれたカナタが寂しそうだったから。
プロの、といっても予備軍ではあるが。
そこで結果を。
ハットトリックという結果を出したら。
妹を引き取ってくれと頼んだ。
それがカナタの望みで。
妹の望みであるのも明らかだったからだ。
だが、今にして思えば。
手伝ってやる必要なかったか?
距離を取ってたほうがマシな気がする。
カナタにとっては迷惑に。
妹は加速度的にポンコツになってる…
☆
カナタ監修となったタブレットを手に取る。
理路整然としているチームのタブレット。
その中でも、ひときわ強い異物感。
『栞の旅館』フォルダをタップする。
どうやら。
そろそろクラファンの開始らしい。
妹のことだ、必ず失敗する。
カナタに泣きつくとこまで想像がつく。
それでも捨てられることはないだろう。
あんなんでも相思相愛だ。
まぁ、栞は栞で、頑張ってくれ。
おれはおれで、やることをやる。
ただ、たった1000万でいいのには驚いた。
てっきり建て直しに数億掛かると思ってた。
それを稼ぐ覚悟も持ってたんだが。
どうせカナタのことだ。
いつのもようになんとかしたのだろう。
あいかわらず、わけのわからないやつだ。
ほんとうに、すごいやつだ、あいつは。
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