第16話 ニートになった
卒業式を終えて。
わたしはニートになった。
みんなにはめちゃくちゃ心配されたけど。
カナくんも兄もニート!
みんなニートだから安心だよ!
って言ってから気づいた。
2人とも仕事してるよ。
やばいのわたしだけだった。
☆
「はぁ…」
「栞、ため息ひどいよ?」
「現実が…重くて…わたしだけニート…」
帰り道、朝香にグチを聞いてもらってる。
優しいのにクールな、一番の友達だ。
「中学出てすぐ稼ぐのは立派だけど、あの2人元からフツーじゃないじゃん。気にしてもしょうがないって。お金のことは任せて、自分のことやりなよ」
「そーなんだけどさー」
お兄ちゃんの契約金は400万円だった。
半分を貯金に入れてもらって。
もう半分はサッカー関連に使うらしい。
年俸も400万円。
どれぐらい残せるかは、1年経費を見て。
ということになった。
ぜんぶカナくんが決めてくれた。
お兄ちゃんは、じゃあそれでって感じで。
やっぱりカナくんに丸投げしてない…?
「カナ先輩のこともよかったね。取られる前に婚約できて」
「それ!ほんとーによかったよー…ほんとーに!」
「まぁ一緒に住んでて他に負けたら、笑うけどね」
「ひど!それはないでしょー!」
「だいぶせき止めてあげたんだから、感謝してよ?」
「それ、は…してるけどさー…」
野生動物みたいな兄と違って。
落ち着いてて大人なカナくんはすごくモテた。
優しいし、笑顔もステキだし。
かっこいいし、甘やかしてくれるし。
モテしかないよね…
なんでか知らないけど。
カナくんの妹扱いされてたわたしは。
紹介を断るのに必死だった。
朝香もだいぶ手伝ってくれて。
カナくんの耳に入る前に。
大部分を消し炭にした。
「高校では大丈夫だったの?カナ先輩」
「実は高校ぜんぜん行ってなかったんだってカナくん」
「ええ…なんでよ」
「ん-…うちの旅館、あったじゃん?覚えてる?」
「ああ、あったね、懐かしい」
「わたしが昔、旅館復活させたいって言ったから…1人でずっと、旅館の手入れしててくれたの。中学から、ずっと。高校からお兄ちゃんの面倒で忙しくなったから、行かなくなったって」
「…それで高校までやめるとか。やっぱぶっ飛んでるねカナ先輩。栞、めちゃくちゃ愛されてんじゃん」
「ねー…やっぱカナくんはすごいよ」
カナくんは、特別だ。
お兄ちゃんだって、そう。
わたしには、何ができるんだろう。
高校いくのやめたのだって。
2人が懸命に頑張ってるのに。
わたしだけのんびり、学生なんてできない。
って思っただけだし…
「栞、今日はもう手伝いないんでしょ?」
「え?うん、そうだけど…」
「よし、じゃあユリも呼んで、ガールズトークしよ」
☆
「えぇ…ちょっと高そうじゃない…?大丈夫…?」
「こういうときは美味しいものでリフレッシュだよ?しおちゃん」
「一理ある、けどさー…わたし、お金あんまりないよ?」
1000円くらいしかお財布にない。
ユリちゃん提案のお店はちょっと…
いや、だいぶお高そうな感じだ。
おな中の生徒いなさそーって遠目のとこきたけど。
ここはうちの旅館にけっこう近いし。
そっちの知り合いがいても気まずい…
「いいから行くよ。足りない分は出すから」
「そうそう!さ、食べるよ~」
うぅ…ぐいぐい押さないでぇ…
☆
「お待たせしました。シェフのお任せ、です」
店員さんにおじぎして、ほっと息をつく。
「ギリ足りたー…」
ドリンクとケーキセットで1000円!
高い!高いよー!
でもこれ以外は超えちゃってたし。
1000円で済むのがあってよかった。
そう思うべき。
うん。
「足りない分出すって言ったのに」
「足りるならいいのーわたしは堅実なの!」
「ニートになっといて?ギャンブラーでしょ」
「うぐっ」
「あたしもびっくりしたけどさ~ま、カナタ先輩いるし?ならどうとでもなるよね?ほら食べよ食べよ~」
「…なんかユリちゃん冷たくない?」
「んん?カナタ先輩独占したのだれかな?あたしも狙ってたのに…」
「えっそうだったの!?」
知らなかった…
だってぜんぜんそんな素振りなかったし。
「ユリは彼氏いるでしょ。からかわないの」
「てへ」
「…」
はぁ…
スイーツ食べよ…
☆
「それで?何に悩んでるんだっけ?カナタ先輩が相手してくれないとか?」
「カナくんは相手はしてくれてるよ…いや、そういう話しじゃなくて。ニートになってみたけど、何したらいいかなって…」
「あさちゃん、こいつ何言ってるの…?」
「わかる。私もちょっとイラっときた」
「ええ!?なんでよ!」
「だってさ~カナタ先輩と同棲してて?結婚の約束もしててだよ?」
「レオ先輩もカナ先輩も稼いでくれる」
「それでニートだどうしようって…しおちゃん、やばいよ?」
「あー…わかってる。わかるよ、そう言われたやばいよ。わたしのために2人がちゃんとしてくれてるのに…でもさー何したらいいか、何ができるかわかんないんだよー…」
うぅ…
スイーツが心にしみるぅ…
「栞、わたしのためにってどういう意味?」
「…え?」
「しおちゃん、別に働けないわけじゃないんでしょ?2人だけが稼いでくるの気になるならさ~しおちゃんも働いたらいいんじゃない?」
「あー…」
そういえば。
ちゃんと話してなかったっけ。
うーん…
カナくんからは、お金のこと。
信頼できる人にだけ明かすように。
って言われてるんだけど…
いいかな?
この2人なら。
いいよね、カナくん。
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