第6話 スンッてなる
J3スタジアムにとうちゃーく!
意図せずカナくんとデート!
嬉しい。監督には感謝しかない。
でもこれ、チケット代。
「カナくん、中高生1000円って安い?」
「水族館とか映画館くらいの値段なんだね。もっと高いと思ってた」
「J2とかJ1になったら、もっと上がるのかな?」
「うーん…あとで一緒に調べてみようか」
「うん!」
「よしよし」
水族館とか映画館もいいなぁ…
カナくんがスマホをゲットしたら、ふふふ。
いろいろ楽しみになってきちゃったな。
頭よしよしも嬉しいし!
☆
「なんていうか、ガラガラだね…」
「人気ないのかな、プロでも。席ってどうなってるの?」
「えっと、あのへんなら、どこでもいいみたい」
スマホのチケット画面を見ながら。
ピッチの真横を指さす。
ちなみにゴール裏は500円。
ワンコかー…
収益的にはどうなんだろう?
すごいガラガラだし。
うーん、J3じゃダメそうだ。
「栞ちゃん。録画したいから、ちょっと遠めでいい?」
「いいよー。わたし、カナくんにくっついてていい?」
「いいけど。なんか久しぶりだね、そのノリ」
「えっへへー。ようやく帰ってこれた感あるね!」
「楽しそうなのはいいんだけど、転ばないようにね」
「うー…はい…」
そこまで子どもじゃないって言おうとして。
ドア、ぶつかってた。
つい昨日、やっちゃってた。
気を付けなきゃ、わたし。
☆
「さっきレオたちの試合少しみたけど、あんまり変わらないね」
「そう?動きはなんか、キビキビっとしてる気がするよ!」
「体格とか、筋肉の付き方がね。へーそうか…動きは差があるのか…」
「ふむふむ」
普段はぽやーっとしてる感じのカナくんだけど。
こうやって真剣なときは。
ちょっと男らしくなる。
正直、好き。
わたしと話してるときと口調?も変わるし。
これがギャップ萌えってやつだ。
うんうん。
お兄ちゃんは大してかわんねぇって言うけど。
カナくんのこと雑に扱いすぎだよね。
こんなによくしてもらってるのに。
失礼だよ。
「栞ちゃん、監督にJ2も取れるか聞いてみてくれる?」
「はーい!」
ほら、こうやってどんどん先に行く。
うかうかしてると置いてかれるよ?
見捨てられても知らないから。
わたしも気を付けないとだけど。
いや、ほんとに危機感ある。
あ、
「どっちにしても来週かな。レオたちのと見比べて、修正していきたい」
「うん。いま監督からチケットきたけど、来週の土曜、13時だって!」
「早いね…ちなみにそれ、いくらなの?」
「中高生は1200円…やっぱり、安いね」
「J1まで上がらないと、選手は稼げないのか…?」
「お兄ちゃんの野望は遠そうだー」
「レオはJ1が目標なの?」
「んーん。めちゃくちゃ稼げる選手になる!が目標だってー」
「さすがレオ、アバウトだ」
「ねー、カナくんいなかったら、どうにもならないよ…」
「そうかな?案外1人でもなんとかしそうだけど」
「ぜーったいムリ!いまごろ足折ってるか、激太りしてるよ、ぜったい」
「兄の信頼度、低いね。栞ちゃん…」
「そこはほら、兄妹だから?分かり合えてますのでー」
「レオ、かわいそ…」
カナくんは、なぜかお兄ちゃんの評価が高い。
でも、わたしはそうは思わない。
カナくんがいなかったら。
そもそもサッカー続けれてないし。
そうだよ!
もっとカナくんに感謝すべきでしょ!
お兄ちゃんは。
そういえば、
「カナくん、日曜日はどうするの?」
「栞ちゃん、水族館いきたいの?」
「いいの!いくいく!やったー!」
「声が大きいよ、おさえておさえて」
「あっ、ごごごめんなさい…」
ひー周りからめっちゃ見られてる!
誘ってくれるって思わなかったら、つい。
また舞い上がってしまった…
ぺこぺこと頭を下げながら。
あれ!
土曜日がスタジアムデートで!
日曜日が水族館デート!
んー連続とか!嬉しいなー!
「栞ちゃん…拳を天に突き上げるのやめようか。すごい目立ってる」
「はっ!」
慌てて腰を下ろす。
カナくん、みなさん。
ごめんなさい…
☆
スタジアムからの帰り道。
カナくんにひっつきながら歩く。
昔からカナくんの横には兄がいて。
ずっとブロックの被害にあっていた。
なんて意地の悪い兄。
だから、わたしの定位置はいつも背後。
カナくんの腰に腕を回して。
ズリズリ。ズーリズリ。
「栞ちゃんも大きくなったし、そろそろそれやめない?」
動きづらそうなカナくん。
でもやめない。
「腕組んだり手繋いだりすると、どこからともなくお兄ちゃん飛んでくるんだもん」
「あれはレオなりに嫉妬してたんだよ。ほら、もう結婚の許しも得たしさ。大丈夫だって」
「わー!なんかそれ、あらためて言われるの。はずかしいってー!」
結婚、っていうか!
年齢があれだから、婚約?だけど。
夢じゃないのが嬉しい!
場所を変えて、腕に抱きつく。
カナくんの、左を取る。
いい、いいよこれ。
すごく恋人っぽい!
辺りをうかがう。
…お兄ちゃんは、よし。こないな?
「…そういえば監督、チームみんなで祝福したいって言ってたよ」
「あ、そういうのは大丈夫です。いらないです」
スンッてなる。
どうせあの人たち、お酒飲みたいだけだし。
すごく臭いから、ほんとにいや。
いい匂いのするカナくんで上書きして。
はぁー…
そろそろこれからのことも考えないとね。
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