第4話 おやすみなさい
カナくんにダメダメなとこ見せて。
自分の部屋に引きこもった。
兄のノックもムシしたのに。
監督からの通話が鳴りやまない!
そーだよねー…
カナくんの写真。
何十枚ってアップされてるんだもん。
そりゃビックリするよね…
はぁ…しかたない。
「監督ー…わたしいま傷ついてるんです。そっとしといてください」
『その件は大丈夫だ!レオがちゃんと誤解を解いて帰ったからな』
「兄が…?」
珍しいこともあるものだ。
猪突猛進のフォワードタイプな兄が。
そんな気を、回す…?
『カナタくんが好きすぎてヤバイんだろう?だから許してやってくれと言ってたぞ!』
「…」
なにを、してくれちゃってるの!
あのバカ兄が…!
『まぁカナタくんを前にしたときのあの乙女な感じを見れば、誰でも気づく。だから気にするな!それより、献立の件だ!』
「乙女な感じ?…してた?わたし。してました…?」
『してたしてた。それより献立の件だ。すごいぞあれは!よくたった数時間であれだけのものを作れたな?しかも全員分!カナタくんは天才なのか?』
「それは…天才、ですけど…ちょっと、いいですか?それより、乙女のほうが…問題、でして…」
『なにも問題ないじゃないか。レオは出会った当初から、栞ちゃんが好き好きオーラだしてたって言ってたぞ?つまり、そのときからずっと乙女してたってことだろう。いまさらだ!で、献立の件なんだが』
「おやすみなさい」
スマホの電源をオフにする。
ふー…
どうしよ。
どうしよ!?
☆
しばらくゴロゴロしたけど。
何も、思いつきませんでした。
思えば、どうせ面倒をこれから頼むんだし。
乙女しててもしてなくても。
あんまり関係ない気がしてきた。
そうだよ!
そうに違いない。
だからこの勢いのまま。
カナくんの部屋をノックする。
「どうぞー」
「おじゃまします…カナくん、面倒のことだけど」
ドアを閉めて、切り出す。
緊張する前に、言い切ってしまおう。
「将来、この旅館を復活させるときに、大旦那になって欲しいの」
「いいけど、それが面倒だったの?」
「えっ?」
「え?」
あれ…?
なんか、軽くない…?
ちゃんと伝わってる?
大丈夫?
「その…カナくんが大旦那で、わたしが女将で、つまり、その。将来、ふ、夫婦になる、ってこと、なんだけど…」
や、やばい。
意識したら、頭が。
へんになりそう…
「ああ、そういうことか…栞ちゃん」
「な、なん、ですか…?」
「旅館のトップって1人なんだよ。大旦那か、女将、どっちかしかなれない」
「…?!」
そうなの!?
えっと…スマホ…ない!
あぁ、電源切ったまま置いてきちゃった!
「検索しなくても、そうだよ。それで、面倒っていうのは、大旦那のことでいいの?栞ちゃんは女将やらなくて」
「お、女将はわたしが…やる…やらないと…だから」
だって、これはお母さんとの約束だし。
どっちかしかなれないなら、わたし。
わたしがやらないとだから…
「本当のお願いごとは、夫婦のほう?」
「本当の…お願いごと…?」
「栞ちゃんがいいなら、ぼくもいいよ。ありがとう、これからよろしくね」
「え?えっと、え…はい…よろしく?おねがい、します…」
「今日はもう遅いし休んだら?ずっと酷い顔してたし」
「あ、うん…休み、ます。休む。おやすみなさい…」
☆
…えっ!?
あれ?わたしの部屋!?
帰ってきてる。
あれ?さっき、まさか。
なんか、受け入れてもらえた?
すごくさらっとしてたけど、いけた?
えー…
か、確認するのこわっ!
明日になったら、なんのこと?
とか言われそうでこわっ!
もー…カナくんテンションが!
いつも通り過ぎてわかんないよ!
でもいつでもあんな感じだ!
すごいなーカナくん…
結婚、の話しなのに…
ふ、不安だ。
不安になってきた。
なんかいろいろ…
聞き間違いとか?あったかもしれないし。
そうだ。
お兄ちゃんに確認させよう。
今日されたことを考えたら。
これぐらい許されない?
いや、でもそれもわたしのミスからだ…
うー…カナくん…
どうして結婚してくれるの?
わたしこんなポンコツなのに…
☆
もんもんとしてたら寝てた。
みたい。
気づいたら、朝で。
スマホの電源を入れたら。
兄からのメッセージ。
祝とクラッカーの絵文字、だけ。
もー!雑!雑だよ!お兄ちゃん!
ちゃんと文字にして!
妹の不安とか、わからないの!
スマホを放り投げようとして気づく。
通知が…凄いことになってる?
そのどれもが。
おめでとうとか、祝っぽい絵文字で。
サッカーの、グループから…
「なんでそうやってすぐバラすの!お兄ちゃん!!」
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