第3話 初めての婚活パーティーは地雷だらけ

 いよいよ、回転寿司形式の男女1対1の面談が始まる。

 前に、年収や学歴、身長や体重が書かれた紙を置いて、3分づつ話をしていく。


「初めましてぇ、伊藤と申します」


 私は、精一杯のスマイルで、最初の男性を迎える。

 35歳、身長180cm、有名私立大卒業。

 年収800万、外資系系企業社員。


 年収は、物足りないが、塩顔のイケメンだ。


「あ?いきなり、年齢上限いっぱいかよ。ついてねえな」


 男性は、スマホを見ながら横目で呟いた。

 そして一切喋らない。


「…」


 私も絶句したまま、3分が終わった。

 何だこいつ!?

 私は、男性から、こんな扱いを受けた事が無い。

 年収800万の会社員程度が、何様のつもりだよ!


 これが、婚活パーティーのノリ?

 なら、私も厳選してやる。




「どうも、よろしくお願いします」


 次の男性が笑顔で挨拶する。


 38歳、身長167cm、国立大学卒

 年収500万、公務員。


「はぁ…」


 私は、適当に相槌を打つ。


 公務員といっても、大した事ないのね。

 おじさんだしチビ。

 話にならないわ。


 私は、終始、男性の話を受け流して3分を終える。


 その後、何人も、このレベルの男性が続く。

 どいつもこいつも、おじさん低収入のブサメンばかり。

 私に釣り合う男は、一人もいなかった。


「こんにちわ~」


 笑顔で挨拶してきたのは、また、おじさんだ。

 低身長でデブ、おまけに頭が禿げあがっている。

 39歳、身長156cm、私立大学医学部卒

 年収1200万、親の病院の継いだ開業医師。


 なっ!この、おじさん年収1200万なの?

 でも、さすがにないわー。

 パスで。


「いやー、みんな中々話してくれなくて。私、話が上手くなくて」


 医師のおじさんが笑う。


 違うよ!お前みたいな、おじさんブサメンと、可愛い女の子達が話すわけないでしょ。

 原因は、話が下手な事じゃなくて、見た目だよ!


 私は心の中で思ったが、何も言わず無視した。




 そして、遂にハイスペックイケメンが周ってくる。


「初めまして、医師の横井と申します」


 塩顔のイケメンが、笑顔で私に挨拶する。


 きたー!!私は、心の中で叫ぶ。


 30歳、身長185cm、有名私立大医学部卒業。

 年収2000万、親の経営する病院で勤務中。


 これぞ、私が求めていた男性だ。

 婚活パーティーでも、こんな凄い良縁があるんだ。

 

「お仕事は、家事手伝いとありますが、どんな事を?」


 彼が聞いてくる。


「はい、料理は得意です。掃除、洗濯も私がやっています。元保育士なので、子供の扱いも慣れています。家庭的なところが自慢です」


 私は、精一杯の笑顔で、そう言った。

 本当は、お菓子作り以外ほとんどやった事がない。

 掃除、洗濯は全て、お母さんに任せている。

 子供の扱いが上手い事だけが本当だ。


「へえ、それは、いい奥さんになれそうですね」


 彼が、笑顔を返してくる。

 いい奥さんになれそうって、それ脈ありって事?

 これは、彼から交際を申し込んでくれるかも。


「ところで、専業主婦希望なんですが、大丈夫ですかぁ?」


 私は、猫なで声で聞く。


「はい、特にこだわりは無いです。お互い高め合うには、パートナーにも仕事を持ってもらいたいですが、専業主婦として支えてくれるのも嬉しいですね」


 彼は、そう真面目に返してくる。

 よし!これはもう私を好きになってるわね。

 その気がなければ、ここまで真面目に答えてくれるはずがない。

 スピード成婚も夢じゃないわ。


「そろそろ、時間ですね」


 楽しい時間は、あっという間にすぎた。

 これは絶対、フリータイムで話さないと。

 私は、横井さんにターゲットを絞った。




 フリータイムが始まると、数人のイケメン達に、沢山の女性達が群がっている。

 意外と高身長超イケメンばかりではなく、身長170cmちょっとイケメンで年収700万ぐらいの男性も人気があった。

 まあ、普通レベルの女の子は、そのくらいが釣り合いそうだからね。


 私は、横井さんを探す。

 彼の周囲には女の子達が群がり、大きな円になっていた。

 みんな若くて美人ばかりだ。

 早くしないと出遅れる!

 その人の狙いは私なのよ、無駄な事をしないで!


 私は、群がる女性を強引にかき分け、横井さんの前に出た。

 後ろの女性達に押されて、思わずバランスを崩す。


「きゃっ!」


 私は、横井さんに抱きついてしまった。

 その体を、横井さんがしっかりと支える。

 倒れないように、ぐっと体を横井さんに寄せる。

 胸や腰を横井さんに密着させてしまった。


「大丈夫ですか?」


 横井さんが、驚いた顔で私を見る。


「はい、大丈夫です」


 私は、つい彼に抱きつく腕に力が入る。

 この私の豊満ボディに触って、落ちなかった男はいない。

 これは、完全にゲットしたわ!


「みんな怖い。助けて下さい」


 私は、横井さんの胸に顔を埋める。


「もう大丈夫ですよ」


 横井さんが苦笑いをした。

 周囲の女の子達は、抱きつく私にドン引きして、少し後ろに下がっていた。


「あら、いやだ。すいません」


 私は、彼から離れると赤面する。

 横井さんも、照れながら笑っている。


 でも、これで彼との距離は縮まったはず。

 やったわ!


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