story15 ホワイト・アウト
---------------
苦しげな表情。絶望を目にしたような瞳。
全てが、僕と重なった。
でも…ひとつだけ違う。
それは――――――
---------------
わたし、サイテーだ。
わたしの"決めつけ"は、彼にとっては"自分の意見"だったんだ。
それをわたしは自分の意志だけで見下した。
他人の意見に反対することは、場合によっては相手を気遣ったり、助けるために使うことがある。
見下すことは、相手を傷つけるような行為であり、"自分の為""相手の為"の何にもならないものだ。
自分自身の行動に失望し、今からでも消え入りたくなった。
それと同時に、体温が一気に低下したことがわかった。
――――いや、違う…?
皮膚からの強烈な冷たさ。
辺りは一面真っ白で、異空間のようだ。
まるで……
『 ふぅ…っ 』
その後の思考を停止させるように、誰かしらの声が耳元で囁くように聞こえた。
凛とした声。だけど何だか癒される声色。声からして、まだまだ少年といった若さの男だろう。
誰だろうか。
それが無性に気になってしかたなかった。
ドッ
その鈍い音と同時に、肌から痛みが走った。
今気づいたけれど……。
真っ白な異空間だと思われたこの場所は、吹雪で覆われた地だったのだ。
その証拠として、分厚い服の上にのっかった白い物体…雪とは思えない雪の塊を、私はこの目で捉えていた。
でも、ただの吹雪ではない。
それは思考がまだ12才程の私でもわかることだった。
じゃあ、何?と思うだろう。
私は以前、"ホワイトアウト遭難事件"というニュースを見たことがある。
ホワイトアウトとは、森林限界を越えた標高になると辺りが完全に真っ白になり、身動きが困難になってしまう。
それだけではなく、『すぐそば』のものさえ『何があるのか』わからなくなってしまうという怪奇のような現象である。
私は今、その状況に陥っているのだ。動こうとしても、やっぱり動けないという。
あれ…でも―――。
ドサッ
雪を掻きわけるような音が聞こえた。
それと同時に……体が、勝手に動いてる!???
足がゆっくり進む度、雪の重みを感じる。
声も出していないのに、またもやあの声が聞こえた。
でも…今度は囁いてはいない。
『 ―――気づいて‼兄ちゃんだよ…兄ちゃんの声だよ……‼ 』
気づいて‼と、引き続き叫ぶ声。
最初の声は大声過ぎて聞こえなかったけど…多分、誰かの名前を言ってたんだと思う。
その声は、先ほどの声より凛としていなく、怯えているようで、苦しみを露にしたような声でもあった。
大声を出し過ぎたせいか。
体力が一向に落ちてきているのが分かった。
このままじゃ――――…‼
ドスッ
視界は仰向けになり、凍えるような…それも固めの雪の冷たさが、痛みと同時に背中で感じる。
一番危険を感じたのは、この場から一向に動こうとしないこと。
ずっとここで倒れていたら、徐々に体温が減少して……。
考えているうちに、体温はさっきと比べてじりじりと低くなっている。
多分だけれど。
自分では動かせない…そして勝手に体が動いてしまうということは、この体は私のものではなく。
"誰かしらの記憶"に今私が移りこんでいるのだろう。
でも通常…何かしらで困っていない人には、私が移りこめるわけがない。
だから、もしかしたらこの人が――――…。
" 私 の 使 命 に 、 選 ば れ た 者 な の か も し れ な い "
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます