story14 最低
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静かな空間だった。
落ち着いた時計の音が、心にゆとりを持たせる。
優しい顔つきの者、気持ちよさそうに眠る者、微笑みを浮かべている者。
その空間に一人だけ。
"それ"が偽りのように。
彼の顔は、不快で満ち溢れていた――――。
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「約束…?」
誰かの声に、目を覚ました。
声からして、少女と言っていいだろう。
「で、氷河の"約束"っていうの教えて」
ぁあ。そうだった。
ボクは今、"彼女"に交渉を持ちかけていたんだ。
――――僕の約束を守るならば…君の今後について教える、と。
「 " 自 分 の 今 後 " か 、 " 僕 の 約 束 " 。 約 束 を こ な せ な い く ら い な ら そ れ ほ ど 生 き る こ と に 重 大 な 任命 が な い 。そ う い う こ と で し ょ ?」
――― Rinne Side ―――
「 そ れ ほ ど 生 き る こ と に 重 大 な 任 命 が な い … 」
ピキッ
彼の言葉に、顔にしわが寄る。
そして頭に血が上ってゆく。
「―――ぃ」
「何?」
「ぅ、うるさぁぁあああい‼」
ビク…ッ
氷河の肩がすくんだところを、私の目でばっちりとらえていた。
だが、お怒り中のわたしには"気遣い"というものは、ない――――。
「わたしがどれだけの想いを抱えてここに来ていると思ってるの‼
アナタのその"決めつけ"こそ、無関心から生まれた"任命のなさ"でしょ!?」
全身に力がみなぎる。
昔から口喧嘩には自信があった。
だから、何を返されても答えられる。
そういう自信があった。
だから、ケンカができた。
ケンカができる自信があったから。
「決めつけ…そうしたら君こそボクのことを"無関心"って、決めつけていることになるけど?」
え…?
「君にとって、"無関心"は決めつけじゃないのかな?」
ニコッと、彼は微笑んだ。
意地でも怒らない彼を見ると、キレているわたしが恥ずかしくなって。
ますます彼が嫌になって……。
「なんであなたはそんなにも決めつけるの!?…」
『 人として お か し い よ ! 』
心の中で溢れ出た言葉が口に出る。
わたしはいつの間にか、なぜケンカしているのかわからなくなっていた。
「 … ボ ク に と っ て 、"決めつけ"は 君 と は 違 う " 他 人 の 意 見 " な ん だ」
彼の優しい声に、目が覚めた。
「 君 の 言 う " 無 関 心 " も 、" 君 自 身 " の 意 見 だ 」
…そ、っか。
衝撃の事実に、下を向いて、彼から顔を背けてしまう。
…そうだったんだ。
"任命のなさ"も"約束をこなせない"も。
"彼の意見"だったんだ。
彼が指摘した"無関心"も、わたしの意見。
彼はそう言ってくれた。
わたしは、その彼の"意見"を見下した。
それに、喧嘩している理由も『 喧嘩ができるから 』。
わたし、サイテーだ。
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