story8 汚花畑




「きゃあああああああああああああああ‼」


声を出したのは___わたしではなかった。

驚いて、辺りを見回す。

丁度真横だった。

ひとりの少女が、震えた目でこちらに訴えていた。

「___ん...‼」

でもロープが邪魔で言葉を出せない。

「ほどいて...ッ‼腕の...っロープをほどいて‼」

強烈な匂いのせいか、彼女は上手く日本語を喋れていない。


____日本語?


もしかして、日本人!?

「気づいた...ら、ここにいたの‼あたし死、んだはずだったのに‼」

わたし以外にも同じ目に遭ってる人がいるんだ‼

なぜ?と考える時間はなかった。


___どうしたら救える!?


時間的に彼女のほうが早く花畑に投げられる。

流石に花畑に触れたら即死.......というわけではないだろう。

ロープで縛られている状態で、助ける方法は___。


ギリギリ...


奇妙な音とともに、口の縛りが軽くなった__というより、なくなった。


「あっ...」


喋れる...‼

彼らが口についているロープを切ったのだ。

だが、メリットだけではなかった。

「く...臭ッ‼」

ロープがなくなったと同時に、強烈だった匂いが比べ物にならないほど増した。

「鼻で息をしないで‼数分もしないうちに死ぬわよッ‼」

「わかッ......」

鼻呼吸をしなくても、口から感じる生臭い、腐った匂い。

お腹にも届く刺激的な香りだ。


ドンッ


すると、彼女が花畑に放り投げられた。

やばいやばい‼即死じゃないけど、数分で死んじゃう...!

彼女が放り投げられたと同時に解放されたわたしの腕。

だが、腕をブンブン振り回しても何一つ変わらない。

ただのエネルギー消費...。

「どうすれば...ッ救える!?」

頭が回らない。回ろうともしない。

なんで本番の時こそ運が悪いのッ‼

誕生日の日に死んだのもそういうことだと思う。


ドンッ


いつのまにか時間が過ぎたのか。

わたしも花畑に放り投げられた。

うっ...臭いどころじゃないよこの匂い...。

真横にいる彼女は青色でも赤色でもなく、ただ具合が悪そうに白い顔をしている。


「も無、理...。死んじゃ...」

そう言って彼女は目を閉じた。

「ダメだ、よ‼目を閉じっ...最後まで、希望はあるか...らっ」

「わかっ...てる......」

でも彼女は目を開けるのも限界そうだった。

息も浅くなっている。

もう生きるのすら限界なのだろう。

「死んじゃダメ‼ダメダメ‼」

真横にいるのに、助けられないこの絶望感。


「 あ り が と う 。最 後 ま で ...... あ た し の 分 ま で 、 生 き ろ 」


そう言うと、彼女は動かなくなった。

なんで‼罪のない人間がこうやって...!

怒りで全身に力が入る。


グラッ


「へ!?立てる...!」

彼女の思念...想いが力になったのか。

彼女が死ぬ前にこの力があれば...!

でも、過去のことを考えたって何も変わりやしない。

わたしは力ずくで、花畑から脱出した。

「許さない......ここの主を‼」

わたしはレキの神殿に、正面から突入した。










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