story2 転生輸送センター〈1〉
チッ…チッ…
どこからか時計の鳴るような音が聞こえる。
目を開きたいけど、まぶたが鉄みたいに重い。
無理やり開けようと、唯一動いた手でまぶたどうしを引き離す。
「ん……」
やっとのことで目を開けると、真っ白の……雪のように白いけれど、雪みたいとはあまり感じない色の天井が目に入った。
わたしは仰向けに寝ているようだった。
横を見ると、白く光る異空間が果てしなく続いていた。
体全体に力を込めて立ち上がる。
「うぉ……っ」
あまり力が出ず、転んでしまう。
立ち上がると、さっきまで見えていなかった何億ものレバーが、浮かび上がって来たように、数メートル先に現れた。
周りを見渡すと、肌、髪、目など……どこの国かもわからない人たちが、私のように戸惑った様子で辺りをうろうろとしていた。
ここに来ていたのはわたしだけではないみたいだ。
ひとりではないことにホッとしたけれど、私は
「……っとえー。あぁ君は〝現世日本人〟だねよかった。んじゃあ、ここのどれかのレバー下げといてねー」
背後から急に妙な早口声が聞こえたせいで、体が固まる。
「ん?あぁそうだ忘れてた忘れてた」
私が固まったことに気が付いたのか、彼が訂正し直す。
「まず君は死んだんだよー。交通事故死かな?可もなく不可もなくな死に方だね。ってことで次の転生先を決めたくてねー。レバーを押したらランダムに決めてくれるから。ほら早くー、次のお客さん来ちゃうよー」
え、死んだ?
またしても頭が追い付かず、困り果てる私。
そんな軽い口調で物騒なこと言われても、ピンとこないんですが……。
「えぇ……。まずここはどこなんですか?」
仕方なく訳が分かるまで質問責めをすることにした。
「転生輸送センター」
「何をするところですかね?」
「死んだ奴を転生させてあげる」
「なんで勝手に転生させられるんですか?」
「そう上司に言われてる」
「貴方は……」
「はいはいもういいから早くレバー下げてきて。君より転生が難しい奴らも
たくさんいるんだからー。ほら死刑囚とかさ、ね?はー考えるのめんどいめんどい」
いかにも気だるそうな顔をして彼は言う。
そして少しの間立ち止まっていた私を、しっしとどかしてしまった。
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