story3 転生輸送センター〈2〉




「あれ......」

よく見たら、ベンチで誰かを待っているような人もいた。

話しかけようかな...でも、さっきのあの人みたいにヘンテコだったら?

「あのぉ...」

最終的に、話しかけてみた。

「......」

返事、というか。

おじさんの目はどこを向いているのかもわからず、長い年月で疲労しているようにも見えた。

そのぉ...とかえっとぉ...とか言っても、見向きもしない。

「あの...‼いいかげん聞いてくれませんか!?」

わたしはいつの間にかいらだって、強い口調で言っていた。

「あぁ...何かね...」

やっと聞こえた...‼

「あなたは、!なんでここにいるんですか!?」

またいらだった口調で言ってしまう。

そのことについては、わたしも無自覚だった。

「お前には...用はない......」

なんで‼せっかく話したのに‼

無自覚なのがまた原因になり、いらだちは

わたしのクラスのみんなだったら、絶対無視なんかしなかったのに‼

"お前には用はない"って、ひどいじゃん...‼

ぷんぷんになって、頭から湯気が出そうだった。

世界中のみんな、なんで真結花みたいに優しくないのっ‼

...ぁれ。なんでこんないらだってるんだろ。

急に、喚いている自分が恥ずかしくなって。

真結花に...まゆに迷惑。

今更そのことに気づいた、

「まゆなら...どうしてたかな...」

おじさんが、けいれんしたように体を震わせた。

「...っ!?もしやぁ____なぁのか!?」

急におじさんが大声になったせいで、少し聞き取れなかった。

それと、久しぶりにしっかり喋ったのか、すこし活舌が悪い。

「あの......なんて言いました?」

「...ま、ゆかの知人なのかぁ!?」

まゆかって、室井真結花?

そう聞いてみる。

後から思ったが、まゆなんて名前、全国に何万人もいるよね......。

まゆなわけないよね...

「...そうだ‼室井真結花だ...!」

え...。

ってことは、この人は何者なの...?

「花の宮病院生まれ、誕生日は7/2だ‼」

知ってるか!?

そう熱心に聞かれ、戸惑うことしかできない。

「えっと、まあ知ってますけど...」

正直に答えたが、そんな詳しくまゆを知っているのが怖くなって、ストーカかと思った。

「あなたは...誰何ですか?」

「...あぁ、すまん。取り乱してしまった」

すると、おじさんは一から説明してくれた。

「わしは、真結花の実の叔父なんだ。娘の子が生まれたと聞いて興奮しちまって。

それで花の宮病院へ急いだ。でもその途中で交通事故に遭ってな...。

救急車で花ノ宮病院へ行くはめになった。目を開けたとき、もう体に感覚が無くてな...。

"真結花に会わせてくれ"と言った。

真結花がちょうど部屋に入って来た時じゃったなぁ。

わしは、真結花を見る前に他界へ逝ってしまった.......」

全く聞いたことがなかった。真結花にそんな過去があるなんて。

「わしは、ずっと真結花を待っているんじゃ。一度でもいい。

彼女の姿を見てみたい」

真結花は今、11才だ。

ていうことは、この人は11年もここにいるんだ......。

「___真結花は......元気か?」

「...ぁあっえぇっと!」

急に問いかけられて焦ってしまう。

「...ええ、とても幸せそうでしたよ、」

"わたしが死ぬまでは"と最後に付け足そうと思ったが、やめといた。

おじさんには...悲しんでほしくない。

そう、脳が本能的に感じ取った。


「...そうか」


そしておじさんはニコッと笑った。

その笑顔は、なんとなく真結花に似ていた。



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