第11話 NC国のSK国侵攻

空想近未来小説


 NC国がおとなしくしていると思っていたら、また少しきな臭くなってきた。何やら新型兵器を開発しているらしい。

 そこでキムと情報交換をするために、SK国にやってきた。キムの事務所は、大規模ショッピングセンターの一角にある。ふだんは、PC教室になっている。あまり流行っている雰囲気はない。もっとも流行っていては仕事がやりにくくてしかたがないと思うが・・・。何人かの生徒はキムの部下で、極東支局と同等の情報収集力をもっているとキムは言っている。

 キムと二人で話し合っている時に、サイレンがなった。

「 Training ? It shouldn't be on your schedule today ? 」

(訓練か?今日は予定にないはずだぞ)

とキムが行った。TVをつけると緊急ニュースが流れている。空には無数のパラシュートが広がっている。

「 It's here ! 」

(来たぞ)

とキムがどなっている。

「 Why don't missiles fly ? 」

(なぜミサイルがこない?)

「 Because I don't want to destroy the city . The aim is a bridge . The shelter is underground . 」

(街を破壊したくないからだよ。ねらいは橋だ。避難所は地下だ!)

しかし、オレは屋上へ向かった。エレベーターは使えない。階段をかけ上った。少し息が切れたが、屋上にでる扉を開けようとした。すると、そこにNC国の兵士の姿が見える。隙間からその様子をうかがう。すると、狙撃兵らしく屋上の一角に陣取って銃を構えている。

 しばらく見ていると、銃口を何かに向けて何かを発射した。銃弾ではない。音もしない。だが閃光だけは見えた。その後、車両が爆発した音がした。

(なんだ、今のは?)

オレは、初めて見るその銃を手にしたいと思った。だが、この扉から出たのでは敵に見つかってしまう。別の出口をさがした。すると、上に点検孔があるのを見つけた。脚立を見つけ、そこから点検孔に入った。案の定、屋上にあるアンテナのところに出ることができた。そして、兵士と反対側のところで、降りた。後は気づかれずに兵士の後ろに近づくだけだ。武器は何もない。途中でレンガ片を見つけたので、2つ手にした。

 5分ほどで、兵士の後方5mほどのところまできた。敵の動きを見て、スキを見せるのを待った。すると、同じ姿勢をするのがつらくなったのか、銃を置いて背伸びをした。

(今だ)

と思い、小さなレンガ片を向こうに投げつけ、ガンガンと音が鳴り、兵士は銃をもって、そっちに向けた。その瞬間、オレはもうひとつのレンガ片で兵士の後頭部をたたきつけた。兵士は気を失った。しばりあげ、近くのポールにくくりつけた。

 銃を見ると、まるで軽機関銃みたいな大きさだ。コードでカートリッジボックスにつながっている。どうやら、これがエネルギー源みたいだ。

(これを持って帰らなければ・・・)

と思い、まずキムのいる地下壕に行った。

 橋は全て封鎖されたという。市内のいたるところに敵の戦車もくりだしているとのこと。第2次C戦争の勃発だ。NC国は綿密に計画を立ててきたのだろう。侵攻は迅速だ。TVでは、

「イゴスン チムコンイ アニダ。C バンド トンイリダ。チグンカジ トイルウル ヒャンヘ ナムチョサンガ ヒョンサンハゴ イッソチマン 、チグンイ チョンコンウン トルニ ヨジヌン オップダ。タラソ ヒムウル カジゴ トンイルハンダ。」

(これは侵攻ではない。C半島統一だ。今まで統一にむけてSK国と交渉していたが、今の政権は話し合いの余地もない。よって、力をもって統一する)

という勝手な声明を出している。

 キムがタッキーに連絡をとってくれた。タッキーはヘリコプターの操縦士である。「江華島(カンファド)で待ちます。ジョーさん、漢江(ハンガン)をくだってこられますか」

というタッキーの提案がでたが、

「江華島の漢江はNC領だぞ」

「エンジンなしのボートで夜に来れば大丈夫です。レーダーには漂流物としか映りません」

ということで、キムと相談してゴムボートか木造ボートを探した。幸いなことに、木造のボートが見つかった。恋人どうしが乗るやつだ。それに例の銃を乗せ、むしろをかぶせたりして偽装した。万が一の場合に魚も積んだ。

 江華島までおよそ50km。川の流れの速さにもよるが10時間かかる。夕方6時に出発した。すでに陽は落ちている。橋をくぐる時は、こぐのをやめ、川の流れに委ねた。時々サーチライトが光る。その際はむしろにもぐり、漂流物に見せた。ところどころで銃声や大砲の音がする。例の閃光も見られる。航空機がその閃光で爆発しているのを見た。

(レーザー銃か?とんでもない物を作ったもんだ)

と思いながら、江華島をめざした。金浦空港は煙の筋が何本も立っている。空港は使えないだろう。

 明け方近く、江華島近くへ近づいた。右岸はNC国、左岸はSK国なので、左側をすすむ。流域はNC国の領分だ。パトロールの小型艇がやってきた。素早くむしろの中に潜り込んだ。サーチライトが小舟を照らす。

(見つかったか? 乗り込まれたらアウトだ)

と思っていると、ダッ、ダッ、ダッと機関銃がさく裂する。小舟に穴があいた。しかし、水がもれるところではない。

 何も反応がないことを確かめたのか、パトロールは去っていった。ジョーは足を負傷していた。かすり傷程度だが、痛みがだんだん増してくる。

 夜が明けたころ、目的地の漢江の支流の河口に小舟をつけた。一応SK国領だが、戦時の今、そのことは何も意味はない。タッキーにSNSで到着の暗号を送った。傍受されていればアウトだ。

 15分ほどでヘリの音がした。小型の戦略ヘリだ。すると、対岸から小型ミサイルが飛んできた。追尾型ではないので、タッキーは見事な操縦でかわしている。だが、着陸やホバリングはできなくなった。すると、タッキーは一つの袋を落としていった。あけてみると、ヘルメットとハーネスが入っていた。

(これを装着しろということだな)

すぐにタッキーの意図がわかった。ハーネスについているカルビナをヘリコプターからたれさげるロープについているカルビナに装着しろということなのだ。すばやくヘルメットとハーネスを装着した。ライフルを背負うことはできたが、カートリッジボックスで困った。ロープにとりつくためにはどうしても両手があいていなければならない。そこで考えた。そしてヘルメットを脱ぎ、それをかごにし、カートリッジボックスをくくりつけ、しっぽのごとくハーネスにつけた。と、そこへタッキーのヘリが接近してきた。案の定ロープが垂れ下がっている。1回勝負だ。

 ロープを両手でつかむ。両手の中で、ロープが流れていく。すると、ロープの先端近くにカルビナがついていた。そこをつかみ、空中にあがる前にハーネスのカルビナを結束した。そこでグンと体が持ち上がる。と同時に反転する。円を描くようにジョーの体が舞う。そこに敵のミサイルが飛んでくる。タッキーはロープをぶら下げたままで、左右に機体をふる。ロープにぶらさがっている方はたまらない。

 やがて、安全地帯に入ったのか、ヘリは着陸した。

「ジョーさん、大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃない。遊園地の激しいジェットコースターを思い出したよ」

「無事でよかったですね。あっ、でも足に血がにじんでいますよ」

「大したことないよ。かすり傷だよ」

「それではヘリ空母に行きましょう」

今度は座席に乗っていくことができたが、タッキーの操縦はジェットコースターなみだった。やはり悪酔いした。

 ヘリ空母で、レーザー銃を担当者に渡し、ジョーは治療室に行った。足のかすり傷はさほどのことではなかったが、一晩寝ていないので、眠気がおそってきて、そのまま寝てしまった。


 目を覚ますと、ニュースはA国軍の反撃を報道している。ミサイルがNC国へとんでいる。F35戦闘機もSK国に入り込んだ戦車をピンポイントで攻撃している。ただ例のレーザー銃でA国軍側も相当の被害を出している。戦闘は1週間続いた。次第にA国軍とSK軍が押し返し、橋を取りもどした。一部の橋は破壊されたが、銅雀(ドンジャク)大橋などは残った。それで地上部隊が市街地に入ることができ、制圧がすすんだ。だが、例の新型銃だけにはお手上げだった。なにせ狙われたら必ずといっていいほどやられるのだ。

 しかし、ジョーが持ち帰ってきた新型銃を解析したところ、大きな欠陥があるということがわかった。カートリッジボックスのエネルギー源には限界があり、およそ1時間分の容量しかないことがわかったのである。交換のカートリッジがなければ、いずれ撃てなくなるということだ。ということは、ダミーを標的にすればいずれはエネルギーがなくなる。その作戦が遂行され、2日後には新型銃による狙撃はなくなった。

 A国軍とSK軍の反撃はそれで終わらなかった。国境沿いのNC国の基地のせん滅をはかったのである。それで国境から10kmすすんだところで、戦線は止まった。国連が双方に停戦命令を出し、それを受け入れたのである。その裏では、NC国でクーデターが起きていたのである。主席が一部の軍人に殺され、主席の妹が実権を握ろうとしたが、それも阻止された。リーダー不在のNC国になり、クーデター派はSK国との統一を願ったのである。事実上の降伏である。

 東京にもどったジョーは、安堵感であふれていた。長年の懸案だったNC国の脅威がなくなったのである。これでミサイルの恐怖がなくなったし、半島が統一されたことで、平和への道が開かれたのだ。皆を呼んで宴を開催したいところだったが、任務以外でメンバーを召集することは許されていない。一人で乾杯するしかなかった。

これにて任務終了。

 




 

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