第10話 R国侵攻

空想近未来小説


 またもや極東支局から呼びだしがきた。最近は、2国間紛争が増えてきている。すると、R国が極東に部隊を集結させているとのこと。目標がどこかをさぐっているということだ。

 東ヨーロッパ支局に問い合わせると、R国政府には何の動きはないとのこと。ただ、気になる情報としては軍部の一部が独自に動いているとの情報があるということだ。R国の防衛体制は4つに分かれており、その内のひとつ極東支部の動きが激しいということだ。でも、通常の訓練かもしれないという情報もあった。

 それと別ルートで、別の情報が寄せられた。かつてU国侵攻で功があった民間軍事組織のワンゲルが一度は軍部に編入されたものの、また独立をしようとしている動きがあるということだ。それが極東を本拠にしようとしているという情報だ。

 この2つの情報の信ぴょう性を確かめる必要があった。

 そこで、オレに、ウラジオストク潜入の指令がきたのだ。


 オレは次のメンバーを召集した。

  キム  SK国出身  (情報・通信のプロ)  36才

  リー  C国出身  (爆破のプロ)     34才

  ソチ  R国出身  (船舶・通訳担当)   30才

  ジム  A国出身  (変装の名人)     29才

  マギー T国出身  (ドクター)      28才

  ジン  J国出身  (銃器のプロ)     27才

  ミン  C国出身  (空手の達人)     26才

  カトウ J国出身  (格闘技の達人)    26才


 メンバーとともに、新潟から中古車運搬船に乗船した。ウラジオストクまで丸1日かかる。

 乗船中、キムが情報収集にあたった。それでウラジオストクに海軍だけでなく、上陸部隊やヘリコプター部隊が集結しているらしい。民間軍事組織レベルではない。完全にR国軍の組織が動いている。

 東ヨーロッパ支局のニコライからは、本国に動きはない。あくまでも極東の部隊による単独行動だという報告があらためてきたが、やや信ぴょう性に欠ける。ニコライがごまかされているのかもしれない。

 ウラジオストクに到着して、中古車販売業を装い、30台ほどの中古車を下船させてから、3台の特殊車両に分乗してロシア入りした。特殊車両は見た目はふつうのSUVである。安宿を基地として、主に海軍基地をさぐることにした。

 まずは、イノセントドローンをとばして、情報収集である。キムをリーダーとするチームで、カトウがサポートしている。

 ジムがリーダーの潜入チームは、ソチとミンがサポートしている。ジムが中古車販売業者の社長に扮している。ソチが通訳で、ミンが秘書という役割である。海軍に関係のある会社に売り込みをかけることになっている。

 リーがリーダーの爆破チームは、爆発物の製造にあたっている。材料はばれないように別個にして持ち込んでいる。ジンがサポートしている。

 オレとマギーは、キムとカトウと共に安宿にいるが、臨機応変に動けるようにしている。

 3日目、進展があった。ジムのチームが新たな情報をもってきた。軍がガソリンを大量に発注しているというのだ。その締め切りが3日後だということだ。

 それに加えて、キムも3日後に旗艦のイワノフに上陸部隊の幹部とヘリコプター部隊の隊長が呼ばれているという情報をもってきた。

「 It looks like there will be some movement in 3 days . 」

(どうやら3日後に動きがありそうだな)

「 I think so . 」

(でしょうな)

とジムが相槌をうった。そこで、メンバー全員を安宿に召集した。

「 It looks like they'll be dispatched in 3 days . When I reported this to the Far East bureau , I received an order to carry out sabotage . Therefore , I would like everyone to come up with a plan for what they can do . 」

(どうやら3日後に出動するみたいだ。そのことを極東支局に報告したら、妨害工作をしろという指令がきた。そこで、皆で何ができるか策をだしてほしい)

「 Will you plant a bomb on Ivanov ? 」

(イワノフに爆弾をしかけますか?)

「 That's too obvious . The enemy will also be wary . 」

(それではあからさますぎる。敵も警戒するだろう)

「 I'd like a method that doesn't make it obvious that it's an attack . 」

(攻撃だと分からないような手立てがいいな)

「 If so , I guess I should just let it malfunction . 」

(だったら、故障させればいいんだな)

「 Sochi , is it possible to destroy just and the screw ? 」

(ソチ、スクリューだけを破壊することはできるか?)

「 It's not impossible . However , diving is only possible with two people . Who will protect it ? :

(できなくはない。ただ、潜るのは2人でないとできない。だれが潜る?)

 皆、顔を見合わせたがだれも手を挙げない。そこに、静かに手を挙げた者がいた。

マギーだ。

「 Doctor ? 」

(ドクターが?)

 皆、驚きの顔をしている。

「 I do diving . I got certified to help people who were drowning . 」

(私はダイビングをします。おぼれた人を助けるために資格をとりました)

「 As expected ! Now you can do your craft activities . Lee , are understand bombs OK ? 」

(さすが、これで工作活動ができる。リー、水中爆弾は大丈夫か?)

「 That's easy . A timed method would be fine . 」

(たやすいことだ。時限方式でいいんだろ)

「 That's OK . 」

(それで大丈夫だ)

「 I can mix water with gasoline . 」

(オレはガソリンに水を混ぜることができるぞ)

 とジムが言い出した。

「 It's good . It would cause panic , and it wouldn't be surprising if it happened in R land . 」

(そりゃいい。パニックになるし、R国ならあってもおかしくない)

「 I think I can put a virus on a military PC . 」

(オレは、軍のPCにウィルスをしかけることができると思う)

キムお得意の分野だ。

「 As expected of a member of WPKC . It's reliable . 」

(さすがWPKCのメンバーだ。頼もしいな)

 ということで、3日後、その作戦は実施された。

 旗艦イワノフのスクリューの1枚を損傷させ、通常のスピードが出せなくなり、上陸部隊の車両やヘリコプターは不純物の入ったガソリンで動かなくなった。当然、出動は見送られた。

 だが、極東支局から緊急連絡が入った。

「 Nemuro was attacted . It is said that the troops gathered on Sakhalin have landed . 」

(根室が攻撃された。サハリンに集結していた部隊が上陸を果たしたというのだ)

 メンバー全員に東京への緊急召集がかかった。全員が一度に移動するのは、当局からにらまれる。また、日本行きの航空機や船舶は停止している。そこで、特殊車両を使い中国経由で行くことにした。

 1台目はオレとマギーとジン

 2台目はカトウとキムとリー

 3台目はジムとソチとリン

 3台別々に行動し、C国のK市で集合することとした。距離120km。問題は国境越えだ。ジムとソチは変装術でC国人の顔になっている。後は皆、アジア系の顔をしている。パスポートはもちろん偽造だ。

 1台目と2台目は無事通過した。だが、3台目がひっかかった。R国の出国審査官が2人の顔をいぶかしがって、クルマの検査を始めたのだ。そこで、後部座席の下に隠してあったライフルが見つかった。だが、そこにリンの強烈なキックがさく裂。審査官は吹っ飛んでいった。そこで、ジムは強攻突破。C国までの国境は500m。R国のパトカーが追いかけてきたが、かろうじて国境を越えることができた。C国の入国審査でも厳しい取り調べがあった。ライフルは取り上げられたが、リンの弁明がうまくいき、何とか入国できた。リンの魅力をもってすればたやすいことである。

 後で、リンに

「 What did you say to get me through ? 」

(なんといって通してもらったんだ?)

 と聞いたら、

「 It's easy . I was in danger in R land , so I only carried a rifle for self-defense .  I said , my father is Lee , a party official , and they let me through . 」

(かんたんよ。R国であぶない目にあったから自己防衛のためにライフルをもっていただけ。わたしの父は党の幹部の李よ。と言ったら通してくれたわ)

「 C land's people have a weakness for party people . 」

(C国人は党の人間に弱いからな)

 C国に入り、極東支局がチャーターした航空機でメンバー全員が東京にもどってくることができた。

 すると、根室に侵攻したR国軍は撤退したという情報が入ってきた。自衛隊の反撃にあったということもあったが、稚内に上陸するはずのウラジオストクの部隊が来れなかったというのが大きな要因であった。

 これにて任務終了。


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