第8話 またもやJ国争乱
空想近未来小説
ギザ地区の紛争がおさまって1ケ月。またとんでもない情報がサカイからもたらされた。防衛省内部で不穏な動きをしているメンバーがいるとのこと。詳しく聞くためにサカイと会った。
「ジョーさん、どうも例の宗教団体がからんでいるようです」
「あの宗教団体か? この前の選挙で与党が惨敗して勢力が弱まったんじゃないのか?」
「それでですよ。勢力拡大するために、一大イベントというか大規模テロを企画しているようです。そして、それに乗じて防衛省のメンバーが動くということです」
「その情報はどこから?」
「わたしがWPKCのメンバーと知らない幹部がボソッと言ったんです。その幹部は、打診を受けたそうです」
「どんな打診?」
「大規模テロが起きたら防衛省はどう動きますかね? ということです」
「それだけでは、宗教団体のテロが起きるとは言えないよね」
「それで、その打診してきた防衛省の幹部を追いました。そこで宗教団体の動きがわかってきたということです」
サカイにはその後も情報収集を続けるように依頼し、オレはテロに対する対策をするために、次のメンバーを召集した。
リー C国出身 爆破のプロ 33才
タヤマ J国出身 発明家 32才
アケミ J国出身 情報処理 28才
ジン J国出身 銃器のプロ 26才
カトウ J国出身 格闘技のプロ 25才
ミン C国出身 空手の達人 25才
宗教団体がどのようなテロを起こそうとしているのかまだ不明だが、WPKCの得意とする武力テロに対する備えだけはしようと考えた。薬物によるテロも想定し、物理学者のチャイを中心としたチームを作った。情報担当のキムやドクターのマギーもそちらに入っている。
数日後、サカイから新しい情報がもたらされた。防衛省の対象者が宗教団体の会合にでる可能性があるということだ。そこで、オレはタヤマに盗聴器もしくは録音器をその対象者につけられないか相談した。タヤマは、前からそういうことを想定してどちらも作っていたとのこと。しかし、盗聴器は探知される可能性があるので、録音器を使うことにした。だれが仕掛けるか、やはりミンしかいない。
対象者が防衛省から出てきてタクシーに乗り込もうとする時に、カトウがミンを追いかけ、ミンが対象者の陰に隠れる。
「悪い人に追われています。助けてください」
その時に、上着の背中の裏に録音器をしかけた。対象者はあろうことか、ミンをタクシーに乗せた。そしてすぐに出発させた。
「お嬢さん、大丈夫ですよ。あいつは何者ですか?ストーカーですか?」
「知らない人です。突然おそってきたんです」
「あなたの魅力なら無理もない。どうぞお気をつけて。ここまで来れば大丈夫でしょ。運転手さん、止めてください」
そこで、ミンは礼を言ってタクシーを降りた。後は回収の機会をどうするかだが、ミンの魅力をもってすればたやすいことと思われた。
3日後、そのチャンスがやってきた。対象者が一人でバーに入っていったのだ。だれかと待ち合わせをしているのかもしれない。オレとミンで同じバーに入った。対象者はカウンターで一人で飲んでいる。チャンスだ。ミンがカウンターでドリンクを注文し、その場で対象者にそのドリンクをかけてしまう。そこで、上着を脱がせてふきとる仕草をしながら、仕込んだ録音機を回収するという古典的な方法だ。ミンの魅力で何も疑われなかった。相手は終始にやけていた。
問題は肝心なことが録音されているかどうかだ。タイマーで会合の時間に作動するように設定していたが、雑音が激しい。作ったタヤマは渋い顔をしている。アケミが
「私が解析してみようか?」
と言ってきたので、やらせてみた。まる1日かかったが、雑音のない会話文をきくことができるようになった。最初は、何気ないあいさつの連続だった。だが、最後の方になって、一言だけ
「3日後に本部集合です」
というのが聞きとれた。3日後とは、明日だ。その日宗教団体本部で何かがある。
そこで、宗教団体本部にしかけをした。まずタヤマが作ったイノセントドローンをとばし、本部内各所に置いた。人が見てもハエがとんでいるぐらいしかに見えない。
夜になって人が集まりだした。例の防衛省の対象者もいる。人の動きに合わせて、イノセントドローンを移動させた。それで会合の場所に潜入することができた。
「皆さん、よく集まっていただきました。今日は決行日が決まりましたので、最終確認です」
「おおー、それでいつ?」
「来週の月曜日、朝8時。通勤時間の激しい時間帯です」
「日本は大混乱に陥るな。楽しみだ」
そこで会合は終わった。
「奴ら何をする気だ?」
ドローンを操作していたタヤマがオレにつぶやいた。
「決行日は分かったが、何をするかがわからん。通勤時間をねらうということは、交通機関をねらうと見ていいな。爆弾か薬品か、それとも・・・?」
「日本を大混乱に陥れるということは大規模にするということだろ。1ケ所ではないな」
「そうでしょうな。さらに情報を集めないといけませんな」
その日から5日が過ぎた。例の決行日は明日にせまった。そこにサカイから重要な情報が入った。
「自衛隊が妙な動きをしています。全国各地の部隊が臨戦態勢に入っています。隊員には訓練という名目で集合をかけています」
アケミからは、
「日本各地の港にK国からの船が多数入港しています。主に中型船ですが、中にはヘリコプター搭載船もいます」
という情報が入ってきた。
「まるで軍隊だな」
そこで、オレはひとつの仮説を立てた。もし、入港している船が武装しているとしてドローンで攻撃をしかけてきたら、日本は大混乱になる。それを自衛隊が治安維持活動でおさめたら、自衛隊がこの国を動かすことになる。宗教団体はもともとK国を本拠としている。K国の裏組織とつながっていても不思議ではない。そして、日本の人民に不安を与えることで、宗教団体の勢力を伸ばす魂胆ではないか?
そう考えたら確かめずにはいられなくなった。時間はあと12時間しかない。そこでチームのメンバーを召集して、横須賀に入港しているK国からの不審船に乗り込んだ。
リーが船の後部に爆薬をしかけ、スクリューを使えないようにした。その音を合図にジンとカトウとリンが船に乗り込んだ。オレもその後に続いた。3人は苦も無く相手を倒していく。狭い場所での戦いはお手のものだ。10人ほどの敵をやっつけた。ほとんどは失神させたが、けがをさせて体を動かせないようにした。そこで、船の中を捜索すると、大量の武器がでてきた。それも対空ミサイルやロケットランチャーといったものが多い。これで交通機関をねらう気だったのだ。
早速、オレは警察と海上保安庁に連絡を入れ、対象の船舶に捜査に入ってもらった。これで実行部隊をおさえることはできた。後は、宗教団体だ。そこは、公安の出番だ。その日のうちに公安の立ち入り調査が入った。問題は政権内部と自衛隊内部の関係者だ。自衛隊の方は全国の自衛隊を動かせる人物で、例の対象者とのつながりで幕僚幹部とわかった。政権内部はとうとう不明のままだった。政治家は分が悪いとわかると潜伏してしまう。この日本に巣くう悪徳政治家はカメムシかゴキブリみたいな存在だ。清廉な政治家はそいつらにつぶされてしまう。それが日本の一番の問題かもしれない。とオレは思わずにいられなかった。
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