第7話 ギザ地区争乱

空想近未来小説


 中東のギザ地区でまたもや紛争がおきた。ギザ地区のハマルという武装宗教団体がふだんから敵視しているIS国へ攻撃をしかけてきて、市民200人ほどを捕虜として連れ帰ったのだ。要求は、IS国の刑務所に収監されているハマルのメンバーおよそ2000名の釈放である。

 これにIS国が怒った。ギザ地区にミサイル攻撃を始めたのである。2023年の争乱の再来である。あの時は、ギザ地区の北部をIS国が占領して、その後国際社会の批判をあびてギザ地区を解放したのである。それから3年。くすぶっていた火種がまた吹き出したのだ。

 担当は南半球支局(スリランカ)なのだが、中東地域はシビアなので、一つの支局では対応できない。そこで全支局が協力して対処することになった。

 オレは極東支局代表ということで、集合場所のスリランカに飛んだ。自家用ジェット機があるので、すぐに飛び立つことができる。途中、バンコクで給油をし、スリランカに着いたのは16時間後だった。なぜか一番遠いアメリカ支局のスコットが一番先に着いていた。所用でインドに来ていたとのことであった。

 翌日、対策会議を行った。

 南半球支局の幹部以外では

 アメリカ支局    スコット   A国出身 38才

 西ヨーロッパ支局 アラン   F国出身 37才

 東ヨーロッパ支局 ニコライ   R国出身 39才

 南半球支局    シン    I国出身 36才

 極東支局は私、  ジョー西嶋 J国出身 35才

の5人である。各支局の作戦実行部隊リーダーのエースが集まった。自分が入ったのは光栄だが、気が引き締まる感がしている。

 南半球支局の幹部が、

「 I would like to hear your wisdom on what WPKC should do about the conflict .」

(今回の紛争に対してWPKCがどうしたらいいか皆さんの知恵を借りたい)

「Our duty is to prevent conflicts in advance . Isn't it too late once a conflict

occurs ?」

(我々は事前に紛争を食い止めるのが本分。紛争が起きてからでは手遅れなのでは?)

 とニコライが言った。彼はR国の侵攻をおさえているのに功があるが、他国のことにはあまり興味がない。

「However , there are many casualyies on both sides . We cannot overlook the

sacrifices made to ordinary citizens .」

(しかし、双方にたくさんの犠牲者が出ている。一般市民が犠牲になっているのは見過ごせない)

 中立の立場であるアランの弁である。

「There is one solution .」

(ひとつ解決策がある)

 スコットが自信ありげに言った。

「What is that ?」(それはなんだ?)

 皆が興味深くスコットの顔をのぞきこんだ。

「All you have to do is shoot down all the missiles .」

(ミサイルを全部撃ち落とせばいいんだ)

「Is that possible ?」(そんなことできるのか?)

「This can be done using interceptor missiles developped by the A land .」

(A国が開発した迎撃ミサイルを使えばできる)

「Would you allow A land to use it ? It's from IS land .」

(A国が使うのを認めるか? IS国寄りだぞ)

「There's where WPKC come in . We have a good cause to prevent World War 3 don't we ?」

(そこはWPKCの出番だよ。第3次世界大戦を防ぐという大義名分があるじゃないか)

「That's true through ・・」

(それはそうだが・・)

 その線で今回の紛争終結に向かうことになった。各自の役割分担はスコットがA国との交渉。アランはハマルとの交渉。シンがIS国との交渉。ニコライとオレは戦闘ヘリ部隊を率いて、前線の監視ということになった。


 A国への説得に3日、ハマルとIS国の説得に5日かかったが、どちらも矛のおさめどころを探していたのだろう。WPKCの働きかけをいい機会ととらえたのかもしれない。それにA国が新型迎撃ミサイルを供給する用意があると声明を出したのが大きく影響している。

 そこで、オレとニコライの出番だ。オレはIS国側、ニコライはハマル側の最前線に攻撃ヘリ部隊を進めた。各チームとも6機編成だ。3機は低空でパトロールをし、3機は上空で援護待機だ。機体には大きくUNと書かれ、小さくWPKCと機体番号が書かれている。カラーは白地に青いラインが入っている。まるでブルーインパルスだ。

 IS国側の抵抗は感じられなかったが、ハマル側では地対空ミサイルがとんできて、ニコライの編隊が崩れた。残った5機でハマル側を攻撃したとのこと。ニコライのチームの3人が犠牲になった。ハマル本部は、一部の過激派が本部の命令を無視して攻撃をしたという声明を出し、その後は混乱がおきなかった。

 南半球支局と東ヨーロッパ支局で亡くなった3人の冥福を祈る追悼会が行われた。オレは南半球支局で参加した。いっしょに参加したタッキーが声を発した。

「もしかしたら、オレたちが祈られる方になったかもしれないんですよね」

「運命だな」

「IS国側にしてくれたジョーさんに感謝していますよ」

「あれは、くじ引きだよ」

「まさに運命ですね。神に感謝ですね」


 以上、任務終了。


 

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