第3話 MY国 内戦終結
空想近未来小説
東南アジアの小国MY国で、反政府軍が反乱を起こした。1ケ月ほどで、MY国北部のヨギ州の大半を占拠するにいたった。首謀者はヨギ族で、自分たちの土地を取りもどすと言っている。しかし、これには背景があった。
一昨年、MY国では軍部が無血クーデターを起こし、民主政権を首都から追放した。その民主勢力がヨギ州に潜り込み、ヨギ族とともに軍事政権に対する内戦を起こしたのだ。
オレはこの内戦を終結するために、チームを作った。
キム (SK国出身) 情報・通信担当 36才 前回も参加
タイバイ(MY国出身) 通訳・交渉担当 30才
マギー (T国出身) ドクター 28才 前回も参加
ジム (A国出身) 変装の名人 28才
ミン (C国出身) 空手の達人 25才(女性)
サム (L国出身) 銃器のプロ 25才
作戦は、まずは軍事政権との交渉。そこで民主勢力への迫害をやめさせることとヨギ州の自治権を認めさせる。その後、ヨギ族と交渉し、国連主導で選挙を行い、自治州として存続させる。ポイントは軍事政権が自治権を認めるかどうかだ。
まずは、軍事政権との交渉だ。
キムが国連の文書を作成した。事務総長の名前で国連の極東担当者が訪問するという文書だ。WPKC(World Peace Keeping Corps)は国連の支援を受けてはいるが、下部組織ではない。いわば、これは偽造文書だ。軍事政権から了解のメールがきたので、オレは国連軍の軍服に着替え、ジムとミンを伴って軍事政権参謀長を訪ねた。ジムは国連軍の服ではなく、A国軍の大佐の軍服を着ている。実在の人物になりすましているのだ。参謀長がよく知っている人物だ。
「Nice to meet you . I am Joe SAIGO of UN. I am glad to see you . 」
(はじめまして。国連のジョー西郷です。お会いすることができ、うれしいです)
「You're welcome . If you are with Colonel YOUNG , you can't help but meet . 」
(こちらこそ。ヤング大佐と一緒ならば会わないわけにはありません)
「Now , what do you think about this Yogi conflict ? 」
(さて、今回のヨギ州の争乱のことですが、いかがお考えですか?)
「It's problem . Members , led by the former Vice president , are colluding with
Yogi and causing riots . 」
(困ったものです。前の副大統領を中心とするメンバーがヨギ族と結託して、暴動を起こしているのです」
「So did you send an army ? Don't leave it to the police ・・・」
(それで軍隊を派遣したのですか? 警察に任せないで・・・)
「Some police are Yogi . I can't count on it . 」
(警察の中にはヨギ族もいます。あてになりません)
「Is there anything important in Yogi ? 」
(ヨギ州には何か大事なものがあるのですか?)
「There is no such a big deal . This is for the safety of the people . 」
(そんなたいしたものはありません。国民の安全のためです)
「What so ? In our research , you are involved with Yogi's drug organization . You have a good bride , haven't you ? 」
(そうでしょうか。私たちの調査では、あなた方はヨギ州の麻薬組織と関わりをもっていますね。相当の賄賂があなた方に渡っていますよね)
「That's not true . Is it also proof ? 」
(そんなことはないですよ。証拠でもあるんですか)
そこで、秘書役のミンがある写真を出した。麻薬組織のボスと参謀長が会っている写真だ。
「Who is this person meeting you ? 」
(あなたと会っているこの人はだれですか?)
「He was the one I met by chance at a restaurant . 」
(それはレストランで偶然会った人だ)
「Will the world accept that excuse ? What do you think the A ? 」
(その弁明を世界が認めるでしょうか? A国はどうですか?)
ヤング大佐に化けたジムが、首を左右に振り首を斬るポーズをとった。声を出すと、偽者だとばれるので、終始無言だった。
「Such a Colonel YOUNG , it won't happen now . 」
(そんな大佐、今になってそれはないでしょ)
どうやら実際のヤング大佐は軍事政権に加担していたようだ。このことは、後でA国に報告だ。その後、交渉はこちらの思惑どおりになった。軍事政権は軍隊をヨギ州から撤退させる。ヨギ州の自治権を認め、国連主導で選挙を実施する。これで、ヨギ族と交渉できるカードを持つことができる。
翌日、7人はヨギ州に向かった。実在のヤング大佐はA国本国に召還されたということだ。キムが国連の名前で出したヨギ族への文書に反応はなかった。軍事政権の罠だと思っているのかもしれない。
こうなると強行突破しかない。
キムが本部の建物を特定した。周辺は民兵だらけだ。犯罪者ではないので、殺すことはしたくない。そこで、睡眠薬を使うことにした。
夜になって、ミンが建物周辺にいる民兵たちにコーヒーを配った。現地人になりすましたミンの魅力に、だれも疑いをもつことはなかった。
小1時間ほどで、建物周辺は静かになった。7人全員で建物に入った。執務室にヨギ族のボスとMY国の前副大統領がいた。二人は抱きあっていた。前副大統領は40才を越えているはずだが、女性だ。ドアを強引に開けて入ってきた我々に驚いて、あわてて衣服を整えていた。
「We are members of WPKC . 」
(私たちはWPKCのメンバーです)
前副大統領は、A国への留学経験があるので、英語を解するがヨギ族のボスは英語を理解せず、タイパイの通訳が必要だった。
「You should have recived a document from the UN the other day , did you see it ? 」
(先日、国連からの文書がきているはずですが、見られましたか?)
【MY語】「Aelldarko ngar mamyinhpuu bhuu . Tautmatawaahcoereat ntaunghkyawwat hpyitramal . 」
(そんなものは見ていない。軍事政権の罠に違いないからな)
「That's right . That's what they do well . 」
(そうよ。あいつらのよくやる手よ)
前副大統領もうなずいた。
「This is memorandum approved by the military goverment .」
(これが軍事政権が認めた覚書です」
その文書を二人は読み、目を丸くしている。
「Is there any proof that this is genuine ? 」
(これが本物だという証拠は?)
「There is no evidence . Speaking of which , infomation that the Colonel YOUNG has returned to the A . Why don't you check it out ? 」
(証拠はない。しいて言えば、ヤング大佐がA国にもどったという情報か。確かめてみては?)
前副大統領はメールで首都にいる仲間に連絡をとっていた。しばらくして、
「It seems that there is no support for the military goverment from the A . There is no colonel YOUNG either . 」
(A国の軍事政権への支援がなくなったようだ。ヤング大佐もいないということだった)
「We are WPKC . We don't lie . 」
(我々はWPKCです。嘘は言いません)
「By the way , what do we do ? 」
(ところで、こちらのすることは?)
前副大統領が尋ねてきた。
「It's simple . Ms. goes to the capital and reconciles with the military goverment . 」
(簡単なこと。女史が首都へ行って、軍事政権と和解すること)
「After that ? 」
(その後は?)
「Up to that point , WPKC won't intervene . Ms. recommends it . 」
(そこまではWPKCは介入しません。女史がすすめることです)
「And then ・・・We can't go back here . 」
(となると、ここへは戻れないということね)
「It is possible if it becomes a peaceful country . 」
(平和な国になれば可能です)
「That right . For a peaceful country . 」
(そうね。平和な国のためね)
ヨギ族のボスを監視するために、タイパイ・マギー・サムの3人を残し、女史を連れ立って我々はまた首都へもどった。
翌日、女史と一緒に軍事政権参謀長を訪ねた。例のごとく国連軍の軍服を着てだが、女史にも国連軍の軍服を着せた。女史と知れると軍人たちが騒ぎかねないので、ジムが女史に変装をさせている。そして万が一のためにミンを女史に似せる変装もさせた。情報担当のキムは特殊車両に残り、サポートにあたった。我々は、全員カメラとマイクがついているメガネをかけている。やりとりは全てキムが情報処理している。また、このメガネには特殊装置が組み込まれている。
参謀長の部屋に入ると、笑顔で参謀長は迎えてくれたが、こちらが前副大統領を連れてきたと知ると、手をたたき合図を送った。すぐさま、数名の兵士が乱入してきて、銃を我々に向けた。
(やはり想定範囲内だな)とオレは思った。
「When Colonel YOUNG returns to the A , at the time , Colonel YOUNG said he hadn't come . You cheated me . 」
(ヤング大佐がA国にもどる時、あの時ヤング大佐は来ていなかったと言っていた。おまえら、オレをだましたな)
「I don't call myself YOUNG . You just thought about it . 」
(オレはヤングとは名乗っていない。そちらが勝手に思い込んだだけだ)
変装名人のジムが口を開いた。
「You ! Did you freak out ? Ah , Catch the former Vice president . 」
(おまえか、化けていたのは? えーい、前副大統領を捕まえろ!)
2人の兵士が女史に変装したミンを捕まえようとした。とたん、2人の兵士はミンの回し蹴りをくらい、もんどり倒れた。それと同時にキムが4人にもたせた発煙筒が白煙をあげ、一瞬のうちに部屋は真っ白くなった。
部屋が明るくなると、兵士は全員が気を失っていた。武器は取り上げられ、手は後ろでしばられている。参謀長は銃を突き付けられ、いすに縛られている。全てミンのしたことだ。オレとジムは顔を見合わせ、
「Bravo ! 」(すごい!)
と声を発したが、ミンは当然という顔をしていた。メガネには暗視装置が組み込まれており、白煙の中でもある程度は動くことはできるが、素早い動きができるのは並大抵ではない。
そこからが、参謀長と女史の会談となった。参謀長はミンに銃を向けられているので、強くはでられない。どうしても女史のペースとならざるをえない。
30分後には、覚書に2人が署名をしていた。内容は次のとおりだ。
1.ヨギ州に展開している部隊は所属基地にもどり、本来の業務にあたること。
2.ヨギ州を自治州とすること。
3.MY国全土で民主選挙を実施する。選挙に関しては国連の指導・監視を受ける。
参謀長が署名を終えると、ジムはスマホを取り出し、撮影の準備を始めた。三脚や照明まで持ってきている。変装する際の小道具だ。
画面には、前副大統領と参謀長が映っている。その映像は、特殊車両にいるキムによって国営放送に転送されている。前副大統領が進行役を行い、覚書を参謀長が読み上げる。なかば涙声だ。
任務終了。
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