王子役vsお姫様役

「ふむ。現代男子、これ、一択ですわよね」


「もちろんだ。異論はない」


「王子役ですわ」

「俺はお姫様役で」


「え?」

「え?」


「嘘でしょう、被ると思っていたのに」


「俺だってそうだよ。悪役令嬢、理由は?」


「劇というものは、自分とは異なる人物を演じる、ということ。そこで、自分と似た役をやっても仕方がないでしょう。どうせなら異性がいいなと思い選びましたわ」


「……自分の動機が恥ずかしい」


「わたくしに言わせたからには、現代男子にも晒してもらう義務がありますわ。恥晒しって面白いんですわね」


「言い方!そんな入り組んでないから単純な理由だぜ」


「へぇ」(ヤバそうですわ)


「単純にな、愛されたいんだよ!」


「……は?」


「いや、演劇ではたいてい、男が女に結婚してーっていうだろ」


「偏見」


「いや、別にそれ以外もあるけどさ。なんていうの、異性からでも同性からでもいいから、告白されてみたいの!」


「引きますわ」


「待った、理由はそれだけじゃない。俺が百合を見るのが好きなんだ!」


「……気持ち悪い」


「えっ、なんでだよ」


「そういう、とぼけるのも気持ち悪くなってきましたわ」


「はぁ?健全な現代男子だぜ。俺」


「おろろろろろ。ぐへぇぇぇぇェェ」


「吐くな!」


「げぇぇぇぇ」


「俺片付け出来ないんだよ」


「けッ、そういうのもできた方が、おろろろろ、モテ、おろろろろ、ますわ、おろろろろ、よ。グアアアアアアアアアアアッッッ」


「ごめん、悪役令嬢でもさすがに心配しちゃう。悪役令嬢が主人公に打ち取られたときの効果音なんだけど」


「げほげほ。さすがに演技……。そういう現代男子も、テンプレゲームで悪役令嬢と模される、わたくしの仲間たちの首を取ってきたでしょう……」


「仲間だったのか……⁉」


「ええ。主人公をどうやって引き立たせるか、いかに悪役を演じるかという会議を毎日のようにしておりますわ。寮があって、わたくしの隣に住むヒューゼちゃんも、現代男子にやられたという記録がありまして……」(ギロリ)


「そ、ソウナンデスネ。ゴシュウショウサマ、デス」


「キッ。―――あっ、失礼いたしました。ものすごく脱線しておりました。でも、自分を殺す仲間のお姫様役より、それよりかけ離れていそうな王子様役を選ぶのは、無難ではないでしょうか?」


「おいみんな、愛されたいよな。追いかけられたいよなぁぁぁぁ!」


「暴走してますわ。これのどこが、おしとやかでありまして……?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る