第52話
「言ったでしょ。あたしをロケットパンチで破壊しても無駄だって。バックアップがある限り、あたしは何度でも蘇るの!」
壁に並んでいた数十体のアンドロイド。可愛らしい少女の姿で、腕にはクマのぬいぐるみを抱えている。それらが一斉に同じセリフを吐き出しながら、動き出したのだ。
――本当にデータをアンドロイドに転送して、自分の分身を作り上げるのね……!
アンジュは迫ってくる科学者たちに対して再びロケットパンチを撃つ構えをとる。
――今度はマリカの助けを借りなくても大丈夫。ちゃんと撃つ。
ゴオッ!
再びロケットパンチが勢いよく発射された。
「さっきデータは取らせてもらったわ。劣化コピーが作ったロケットパンチぐらい、なんてことはない」
飛んでくるロケットパンチに対して、科学者10名ほどが一列になって正面から受ける。
ズガガガガガガ!
先ほどと同様に一人目の腹部を簡単に貫通すると、続く二人目、三人目……と勢いよくロケットパンチは突き進む。しかし、六人目の腹部を貫通したぐらいから勢いが弱まり、なんと十人目の前で完全に止まってしまった。一番最後に並んでいた科学者は、アンジュのロケットパンチを両手でがっしりと掴むと、そのまま力を込めて握り潰してしまった。
グシャ! という音を立てて、ロケットパンチはボロボロになって床に落ちた。手首が逆方向に折れ曲がり、人工皮膚が剥がれて内部があらわになる。精巧に作られていたであろうそれも、外からの圧力を受けて変形し、黒い煙を吐いた。
「!?」
少女の姿をしているとはいえ、科学者が作り上げたアンドロイドである。その腕は鋼鉄をも砕くほどの力を備えているのだった。
「アンジュ。あたしがロケットパンチと同じように、ばらばらに分解してあげるね」
攻撃を受けなかった残りの科学者たち数十体が、アンジュを取り囲むように迫ってくる。もうどこにも逃げ場はなかった。頼みの綱のロケットパンチも破壊され、万事休すと思われた。
「やめて……こないで!」
そのとき。
ボン!
ボンッ!
ボボボボボンッ!
科学者たちの体が突然爆発した。まず初めに、一体の少女の姿をしたアンドロイドの頭部が膨れ上がり、内部から破裂した。それを見て不思議そうな顔をした、周りにいたアンドロイドたちも同様に、頭部が膨張し、ボン! と音を立てて爆発していったのだった。
アンジュは目の前で起きている光景に理解が追いつかなかった。誰かが助けに来てくれたのか、それともアンドロイドが暴走したのか、さっぱりわからなかった。
ボン!
ボンッ!
ボボボボボンッ!
爆発は止まらず、アンドロイドが残り一体となるまで続いた。科学者は、自分のコピーが目の前で次々に爆発していく様を見て、慌ててメインコンピューターにアクセスし、原因を突き止め、爆発を止めたのだった。
「マ リ カ ア ァ ァ ァ ァ !」
科学者はそう叫ぶと、天井を見上げた。アンジュもつられて上を向いたが、そこには何もなかった。ただ、何もない空間から、聴き慣れた声が聞こえたのだった。
「あーっはっはっは! この天才科学者マリカ様が、メインコンピューターを乗っ取ったわよ!」
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