第30話「結局みんな自分のことしか考えていないのよね」
違法筋肉集団「ニューエイジ」の王、エイジ。彼も核戦争の被害者の一人である。
彼は勤めていた学校で生徒や他の教師共々被爆した。ほぼすべての者は死に絶えたが、奇跡的に彼だけは生き残ったのだ。もともと筋肉質ではなかったが、大量の放射線を浴びたことにより、体は痩せ細った。しかしその代わりに天才的な頭脳を手に入れ、彼は筋肉を増大させる薬の開発に取りかかったのだった。
この荒廃した世界で生き抜くためには強くなければ――つまり、マッチョでないといけない。「新世界」や「ダン・ガン」といった戦闘集団が暴力で支配する姿を目の当たりにして、エイジはそう思ったのだった。
そうして、廃墟となった学校を利用して作り上げた最初の薬が「M2NR」だった。彼はその薬を自分で試すことはせず、近くにいた子供や病気で苦しんでいる人々に投与して効果を見た。
最初に作った薬は筋肉が増えるが、脳にまで影響を与えてしまい、人間の思考ができなくなってしまった。さらには薬物依存症状もみられ、薬無しではいられないという欠点もあった。
次に作った薬は脳への影響はわずかとなったが、顔や指先といった小さな筋肉まで増大させてしまったため、およそ人とは言えない姿になってしまった。鉄仮面を被って行動しているのは主にこの薬を投与されたマッチョたちである。
さらに改良した薬は副作用もなく、細マッチョに必要な筋肉のみを増やすことはできたが、彼が満足するゴリマッチョには程遠いものだった。ちなみに、門番マッチョや隊長マッチョといった自然マッチョたちはこの薬を服用した者たちである。(ごく僅かではあるが、純粋に自分でトレーニングして鍛えたマッチョもいるらしい)
そして今回、エイジが作り上げたものが「G-M2NR」であった。これまでのM2NRではなしえなかったゴリマッチョになることができ、効果も切れることがない。さらには過去のM2NRでおかしくなってしまった筋肉を元に戻し、自然なゴリマッチョに変化させる。彼は自分たちの部下全員にこの薬を投与し、しばらく経っても異常が見られなかったら、自分も服用して、理想とするゴリマッチョになろうと画策していたのだった。
ちなみにM2NRやG-M2NRに「薬を服用した者は、エイジに忠誠を誓うようになる」という麻薬的な成分も含まれていることは、エイジしか知らない秘密である。どういう物質が作用しているのかはわからないが、被曝の代償として得た天才的頭脳を使って生み出したのだった。この成分により、彼は「ニューエイジ」という一大勢力を築き上げたのだ。
「――って、結局みんな自分のことしか考えていないのよね」
マリカは元理科室にあった古いパソコンからニューエイジのデータベースにアクセスし、その成り立ちについての情報を閲覧していた。そしてM2NRやG-M2NRの成分や製造方法についても頭の中にダウンロードすることができたのだった。
「ニューエイジのマッチョたちはみんな王に忠誠を尽くすように、薬漬けにさせられている……と。つまり、ここを壊滅させるには、薬を抜いてやればいいってことよね」
マリカはウキウキしながら、元理科室にある実験器具をいじり始めた。
◇
それからしばらくして。
ヴァルク野村はマチョダの銅像を抱えて、建物の玄関近くへ移動していた。もちろん、その銅像の中にはアンジュが隠れているのだ。玄関の近くに設置することで、アンジュがこっそり銅像の中から抜け出し、建物の中へ侵入する作戦だったのだが――。
「すげぇ、これがあの有名なマチョダの像か!」
「この筋肉、漫画やアニメで見たとおり……いや、それ以上だな!」
「オデモ……マチョダに……なりタイ!」
ニューエイジのマッチョたちがマチョダの銅像の周りを取り囲むように集まってきたのだ。それほどまでに、架空の人物ではあるが、マチョダというキャラクターはマッチョ界では有名であり、神様のような存在なのであった。
――ちょっとヴァルク! なんなのよこの
――そんなこと俺に言われたって! こんなに人気がある銅像だとは思ってもみなかったんだ!
マッチョたちに気づかれないように、アンジュとヴァルクが会話を交わす。その間にも、マッチョがマッチョを呼び、いつの間にか玄関を取り囲むようにマッチョたちが大集合してしまった。思わずヴァルクも
「すまんアンジュ! 俺は向こうで商売をする! そうしたら少しはこの人だかりも分散するはずだ!」
銅像の中で震えているアンジュに囁くと、一目散に玄関から建物の中へ入っていった。おそらく、マッチョの群れを真正面から突破するのは不可能だと判断したのだろう。建物の中を通って――マリカが侵入した経路と逆を辿って――自分の荷物が置いてある場所まで戻っていった。
――ヴァールク! 私を一人にしないで!
アンジュの心の叫びも虚しく、彼女はマチョダの銅像の中に一人取り残された。周りには銅像を神と崇めるマッチョの集団。彼らが熱い眼差しで銅像を見つめるその姿が、まるで自分を見て興奮しているかのように感じて、アンジュは恐ろしくなった。
「わっ、押すな押すな!」
ヴァルク野村の商売には一切目もくれず、マッチョの集団はますますマチョダの銅像の前に集まってくる。その圧に押されて、銅像の近くにいたマッチョたちが前につまづく。そして、バランスを崩し、彼らは思わず銅像にしがみつく。
「あっ! 銅像が倒れる!」
誰が言ったかわからないが、そう言うや否や、マチョダの銅像がしがみついたマッチョたち数人と共に倒れた。しかも運悪く、特に強度のない腕や顔の部分が地面に直接ぶつかって割れてしまい、中が丸見えになってしまった。
――やばい! 中に隠れていたことがバレてしまう!
銅像は倒れてしまったが、アンジュ自体に被害はなかった。しかし、中に潜んでいたことがニューエイジのマッチョたちにバレてしまったのだった。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
こんにちは、まめいえです。いつもお読みいただきありがとうございます。
さあ、アンジュが銅像の中に隠れていたことがバレてしまいました。次回、衝撃の展開が待っております。ご期待ください。ロケットパンチガール史上、一番くだらないかもしれません( ̄▽ ̄;)
レーティングに関していうと「性描写なし」なので、お色気展開とかそんなのは一切ありませんm(_ _)m
そしてマリカも、理科室で何を企んでいるのでしょうか。こちらも、くだらないことを考えております。もう少し「ニューエイジ編」お付き合いいただけますと幸いです。
少しでも「面白い!」とか「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひぜひレビューやフォロー、応援コメントをいただけると嬉しいです。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます