第242話 第3の大ボス その1



「ヘイトは……取れてるけどダメージが少な過ぎる!」


「魔法に硬いタイプのボスか? なら、物理だ!!」


「俺も行く!」


 ルダンとジュンが10メートルはある邪鬼王に向かって、右足を狙う。斧とハルバードが無防備の右足に斬りつけたが、ガチッと剣が打ち合ったような音が響いた。


「硬っ!?」


「物理方面もかよ!?」


「これは……条件内でしかダメージを与えられない奴……!?」


 体力バーを見ても1ミリしか動いてないように見えた。物理も魔法も効かない大ボスはいてはならないので、条件内でしかダメージを与えられないと判断した。この前に戦った中ボスの鬼ようにーーーー


「しばらくはけんに留めなさい! 何か変化が起きたら攻撃して見なさい!」


 ヨミの指示に皆が距離を取りつつ、邪鬼王を観察してみる。




「『ハンマー・ブレイク』」




 邪鬼王の手に持っていた鉄の棍棒がハンマーの形に変え、地面に向けて叩いた。叩いた後に衝撃が響き渡る。

 邪鬼王の攻撃に対して、前に出ていた者は跳んで衝撃を避けたが空中にいるので次の攻撃には対応がしにくい。




「『シャドゥ・ニードル』」




「私を狙ってきたね! でも、私は空中でも一歩なら動けるわよ!!」


 空中を一歩だけ歩いたり蹴ることが出来る装備があるから地面から突き刺してくる影魔法は避けれた。


「『ファイア・ランス』!」


「『アース・ランス』!」


 メリッサとルダンの魔法使いが攻撃後の邪鬼王に向けて魔法を放ったが、効果は今ひとつだった。


「攻撃後は違うわね。おっと、タゲを取らないと。『魚群アロー』!」


 効果は薄いのわかりきっているが、タゲを取るために『魚群アロー』で目を狙っていく。


「効果は薄くても目潰しぐらいはなるでしょ」


「ダメージはなくても拘束は出来るか? 『ブラッド・バインド』!」


 ジョーが血液を使った武技で両刀から血を放出して邪鬼王を縛ろうとするーーーー




「『ソード・ダンシング』」




 今度はハンマーから剣へ変わり、踊るような剣舞で血の紐を振り払う。


「うげっ! あの身体で剣舞を使うのかよ!?」


「あは♪ これはどうかな? ルイス!!」


「レイドのボスに効けばいいがな」


 カロナとルイスがアイテムボックスから様々な色が付いた瓶を取り出した。それらは様々な状態異常を付与する薬であり、どの状態異常なら付与出来るか試すつもりだ。


「行けー!!」


 薬を投げたカロナとルイスだったが、邪鬼王は避ける素振りも見せずにヨミ達に注視していたので簡単に当たったが…………


「ありゃ、効果なしか〜」


「もう大ボスには状態異常は期待できなそうですね」


「私のダークマターはやめた方がいい?」


「止めとけ。アレは範囲が広いから俺等も巻き込まれるかもしれん。今回は人数が多いからな」


 ダークマターも状態異常を狙う物なので、状態異常にならないとわかったら投げる意味がない。


「っ、何か動きがあるわ! 気を付けなさい!!」


 ヨミは邪鬼王の額に何か動きがあることに気付いた。額に注視すると1つの瞳が現れた。


「ゴガァァァ!!」


「赤いオーラも現れた!?」


「推測だと強化系だろうな!! 攻撃に気をつけろ!!」


 ジュンの推測通りに力が強化されて、鉄の棍棒に戻った振り払いは周りのプレイヤー達を吹き飛ばす程だ。


「力強くなっているわね。……って、タゲが外れてない!?」


「本当だ!? タゲの初期化する効果もあんのか!?」


「急がないと! 『夜天月斬』!」


 再びタゲを取るためだけでダメージは期待していなかったが、黒い刃は腕に当たり……思ったよりダメージを与えられた。


「お!? 体力が削れているぞ!?」


「え、もしかして……ジュン!」


「あぁ! 『ホーリー・レイ』!」


 今度は魔法を使い、肩に当てると体力バーもわかる量で減っていた。


「わかったわ! あの3つ目が開いている間だけ防御力が下がるみたい!!」


「あ、閉じちゃった♪ 時間は10秒ぐらいかな」


「成る程な。3つ目が開くまで逃げ回り、開いたら攻撃だな」


 これで邪鬼王の倒し方はわかった。しかし、弱点がわかっただけでそう簡単ではない。




「とりあえず、体力を削っていくわよ。まだ能力を隠しているみたいだし」




 ヨミが言うのと同時に邪鬼王はまた武器の形を変えているのだったーーーー






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る