第231話 真の『魚群アロー』
ヨミは地下でスキルを試した後、誰かが来るまでソファーで待っていたらーーーー
「一番乗りー!!」
「じゃないわ」
「って、既に帰っていたのかよ」
ヨミの次に帰ってきたのはジュンだった。ヨミは強さからジュンが一先に帰って来ると予想していた。
「それよりも、手に入れたの?」
「問題無くな! 俺の加護はシンプルに回復の量が増える効果さ。更に光魔法も強くなるみたいだ」
「へぇ、良い効果じゃない」
ジュンが選んだ加護は神官に関する能力を強化することが出来るようだ。
「お前の方はどうなんだ?」
「加護については強化するのはまだ早いということで、代わりにスキルを3つ貰ったわ。特別なスキルではないけど、役に立ちそうなのを貰ったから試していいかしら?」
「スキルをね。汎用なスキルは買えるからそれ程珍しいスキルではないなら差は離れないだろうな。戦闘で試したいのなら手伝ってやるよ。俺も気になるからな」
「決まりね。早速、地下に行くわよ」
「急だな。構わないけど」
ヨミは的をゲットし、すぐ地下へ向かった。何も知らないジュンはのうのうとヨミへ着いていくのだった。
「最初に手に入れたスキルを教えておくね」
「ナイフを出して……投擲に関するスキルか? 『必中』を持っていたよな……、他にあったっけ?」
「投擲に関するのは当たっているけど、私が試したいのはダメージの違いよ」
「えっ、それって……的になれって言ってんのかよ!?」
ようやくヨミがやりたいことを察したジュンは的になることに眉を潜めるのだった。
「そうね。終わったらビールを奢ってあげるから受けて?」
「お前はぁぁぁ! …………はぁ、地下まで来たんだからやってやるがビール3杯は奢れよ!?」
「いいわ。まず、ただのナイフを受けてみて。『飛弾威力増加』で少し威力が上がっているわ」
ヨミは説明しながらナイフをジュンの腕に向けて投げる。
「うっ、お前の攻撃力は元から高いんだから思ったより減るな、6%は減ったぞ。普通なら3%は減れば良い方だからな」
ジュンは神官だが、戦士でもあるから防御力は充分高い方たが、ヨミが投げたナイフで6%も減ったことに目を張る。
「ふーん、それぐらいは減るんだね。次は『魔力操作』、『魔力収束』で強化されたナイフよ」
「『魔力操作』と『魔力収束』? それに『飛弾威力増加』だったな。どんな組み合わせだよ」
「さぁ? 渡したイルミナに聞いてよ。とにかく、受けてみて」
今度は魔力を最大限まで込めたナイフを同じ箇所へ投げてみる。
「ん、8%は減ったな。魔力を込めて2%増はショボくないか?」
「やはり、その程度ね。剣やドルマに込めれば少しは違うけど、ドルマは元から強いし、魔力を込める意味が薄いよね」
「…………これだけじゃないな? それなら俺に頼む意味がないしな」
「鋭いわね」
ヨミと長い付き合いがあるからジュンはわかっていた。まだ何かがあると。
「やはりか。念の為に回復しておくか『ヒーリング』!」
ナイフで減った体力を回復させ、次に備えるジュン。
「何を出す?」
「これは覚えているわね? 『魚群アロー』!」
「『魚群アロー』? それに……何を!?」
前までの『魚群アロー』は一度に出せる数が20体が限界だったが…………
ヨミの周りに100体の数はいる光った魚群が浮いていた。
「なんで、この数が!?」
「まず、『魔力操作』の効果よ。このスキルで数の制限を外すことが出来たわ。それでも100体が限界だけどね」
「おいおい!?」
「今までは弾幕ゲーみたいに出来なかったけど、これなら出来るわね。防いでみせなさい!!」
そう言い、大量の魚群がジュンへ向かって襲っていく。
「うおっ!? 『ラージ・ホーリーレイ』!!」
太い光の光線で何十体かは消滅させるが、既に散らばっていたからまだジュンを狙う魚群は多い。
「物理では防げないんだったよな!?」
「そうよ。魔法でしか防げないわ」
「なら、こうするしかないか! 『ギガ・ホーリーバリア』!」
ジュンは全方向から守れるドーム状のバリアで残りの魚群を防いだ。『ギガ・ホーリーバリア』はある程度のダメージを無効化させてくれるバリアである。
「流石。1体も当たらずに防ぐとはね」
「どうだ!」
「でも次はどうかしら?」
「はん、次も防いでいいよな? やってやる…………え、MPがどんどん減っていく?」
ジュンはヨミのMPがどんどん減っていくのが見えていた。あれだけあったMPが0近くまで減ることにジュンは嫌な予感を感じていた。
「見せてあげる。『魚群アロー』の本当の力をね!!」
「はぁぁぁぁぁ!?」
「これが真の『魚群アロー』よ!!」
ヨミの真上に現れた、『魚群アロー』はたった1体だけ。だが、その大きさはヨミが戦った中ボスの『サテライト』と似ていた。
「行きなさい」
1体の魚群アローから十体の魚群を生み出し、撃ち出された。
「十体だけなら! 『ギガ・ホーリーバリア』!」
バリアを張り替えて、もう一回防ごうとしたが、2、3体が当たった所でバリアはあっさりと割れて消え去った。
「はぁ!? なんでだ!?」
「私のMPを見たでしょ? 貴方ならすぐ理解するでしょ?」
「あ……、『魔力収束』!?」
「わかったわね。スキルには耐久力と言う概念がないからどれだけMPを込めても限界がないわ」
「それでもほぼのMPを込めるのはやり過ぎだろ!?」
文句を言いながら、残った魚群は自分の足で避けていく。
「数体なら貴方は避けるでしょうね。でも、こうしたら誰でも防ぐことも避けることも不可能」
「え、…………理不尽だろ」
「私だってほぼのMPを込めたんだからこれぐらいの恩恵は欲しいわよ」
残っていた分の魚群アローと言う1体がバラけて90体の魚群が現れる。数体で『ギガ・ホーリーバリア』を破壊する程の威力を持った弾が襲いかかってくることにジュンは絶望した。
「こんなの避けれるかーーーー!?」
ジュンは避けれないと諦めて、身に受けて体力をあっさりと0にされて消え去るのだった。
ーーあとがき
新しい小説を載せました。
タイトルは『天才気取りは召喚され、殺され、転生する!!』になりますので、良かったら見に来てね。
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