第229話 チャッチボールの終わり
ゴルゴリアとチャッチボールをするヨミだが、既に3回も地面へ落として体力が五分の三も削られていた。
ちなみに回復薬を飲んでみたが、回復はしなかった。おそらく、ゴルゴリアとチャッチボールしてリンゴが完成するまでは回復は出来ず、この場所から逃れることは出来ないようになっているようだ。
(何回か投げて受け止めてわかったことがある…………)
ヨミが気付いたのは球になっているリンゴの状態だ。50%を超えた辺りからリンゴに弾力が付いている。
(75%から出る変化する球を受け止めるのは難しい。なら、こうすればいい!)
手元から逃れるように曲がる球を受け止めれないなら、
ヨミはチャッチするのを諦めて、バレーをするように腕を組んで上へ弾くようにレシーブをした。レシーブした球を落とさなければ問題はない。
「よし、これなら成功と見てくれるわね。弾力が付いたお陰でよく弾むわ」
「ゴァ!?」
球を返してやり、レシーブの構えを取っていく。経験者でもないが、手の平で受け止めるよりは上へ弾いた方がリスクは少ない。
「ゴガァァァ!!」
「今度はシュート!? でも、弾ける!」
次はカーブと反対に曲がるシュートだったが、なんとか上へ弾いてから受け止めれた。
(よし、シュートも弾けた。これで100%になるまで何もなければいいけど…………)
そう願うが、それは叶わなかった。
ついに95%までいった時、ゴルゴリアの様子が変わったからだ。
「グルォォォォォ!!」
ゴルゴリアが叫び始めたかと思えば、腕が倍に膨れ上がり、こちらを睨みつけてきた。
「最後には何かある訳ね。必ず100%にしてみせるわ!」
何が来ても大丈夫ように腰を低くして待ち構える。
「ふー、ご、ゴァァァァ!!」
今までよりも大きく腕を振り切り、豪速球が投げられた。軌道は低めだがレシーブして上へ弾けると判断したヨミだったがーーーー
ギュン!!
(なっ、球が浮いた!?)
地面スレスレだった球が途中から浮き、腰を低くしていたヨミの顔へ目掛けていた。このままでは腕に当てれず、顔へ直撃してしまう。
(このままでは…………)
ヨミは考えた訳でもなく、無意識に口が動いていた。
「キッカぁぁぁ!!」
ヨミは眼の前へキッカを呼び寄せていた。さっきまでモンスターと戦っていたが、スキルで召喚し直したことでヨミの前へ現れた訳だ。
キッカが現れたことで球はキッカが受け止めることになった。このままでは突き破られるのは見えているので指示を追加する。
「上へ
受け止めるのも弾くことも不可能なら、受け流すしかない。都合がよいことに、球が浮くということは球の回転は上へ受け流すのにちょうどよい状態だった。
キッカの長い身体を使い、球を上へ受け流すことに成功はした。
「ん、ゴルゴリア?」
まだ球が上へ飛んでいる時、ゴルゴリアは全ての力を出し尽くしたのか膨らんでいた腕が萎んでいき、更に体力も減っていた。今も減り続いておりこのままなら消滅するだろう。
「……まぁ、楽しかったよ」
このまま消滅するのを無言で見続けるのも気がまずいような気がしたから一言を送った。そしたら、なんとゴルゴリアがゴツい顔を崩して笑ったのだ。
ヨミは驚いたが、ゴルゴリアの右手が挙げられてナイスの形を見せてきたのでヨミも合わせてナイスと送った。完全に消滅したゴルゴリアを見送り、ヨミは上から落ちてきたリンゴを受け止める。
(変なゴルゴリアだったな。まぁ、完成に付き合ってくれたから感謝はしておこう。それに、このリンゴは…………)
〈柑蜜の林檎〉
と出ていたから完成はしたようだ。
クエスト通りにある場所へ〈柑蜜の林檎〉を供える。
「消えた。……メールが来たか」
メールは予想していた人物からだった。
ーークエスト成功ーー
〈柑蜜の林檎〉をありがとうね! 予定通りに加護の強化をしようと言いたいけど、運営の人から早すぎると止められちゃった。
だから、代わりにスキルを3つあげるね。ごめんねーー
イルミナより
(まぁ、現時点でも他の人より加護が強いもんね。仕方がないかな? それに、貰えたスキルは……『魔力操作』と『魔力収束』、……『飛弾威力増加』ね)
最初の2つはシナジーがないけど、最後のはゴルゴリアからの贈り物みたいな感じでふっと笑ってしまった。
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