第228話 久しぶりの敵



 ヨミの前にはリンゴを握る『ゴルゴリア』がいる。こんなとこに最初の街付近にいたモンスターに出会うとは思わず、驚いたが………




ゴルゴリア レベル32




(おや、名前は同じだけどレベルがあの時と違って高いな)


 更に目の前にいるゴルゴリアはクルミみたいな木の実ではなく、リンゴを握っていることに気付く。


「ゴガァァァ!」

「おっと!?」


 投げられたリンゴは正確にヨミの頭を狙ってきたので咄嗟に手で受け止めていた。スピードは早いが、受け止めれない程ではなかった。


「御返しだ!」


 受け止めたリンゴを投げ返し、顔面に当てようとしたが…………




 バシッ!




「む!?」


 なんと、ゴルゴリアは投げ返されたリンゴをあっさりと受け止め、また投げ返してきた。

 その時にヨミは新しい情報がリンゴに付いていることに気付いた。名前の横に数字が付いていたのだ。


「〈普通の林檎 5%〉? …………まさか!?」


 ヨミは1つの可能性に気付いたのだ。〈柑蜜の林檎〉は自然に実っている実ではなく、ある条件によって生まれる物ではないか? と言うものだ。




「チャッチボールをしてゲットしろってことか!?」




 また正確に顔面を狙ってくれているから受け止めるのは難しくないが、次も同じように顔面を狙ってくるかわからない。ランダムにヨミの違う部分を狙ってくるとなれば、受け止めるのを失敗してしまうかもしれない。


 そんな心配をしていたヨミだったが、状況はよりに最悪だった。


(他の魔物が近くに寄ってきている!?)


 少なくとも20回はゴルゴリアとチャッチボールをしなければならないのに、周りから邪魔をされることに顔を歪める。


「ドルマ! キッカ! ゴルゴリア以外の敵とやりなさい!!」


 ドルマとキッカに周りの敵を任せることにして、ヨミはチャッチボールに集中する。50%を超えた辺りからゴルゴリアの投球パターンが変わっていった。

 顔面だけではなく、お腹、右手、左手も狙ってくるようになった。


(面倒臭いな!)


 こっちは『必中』があるから狙いを外す心配はないが、受け止めることには何もスキルの補正がないから落とさないようにしなければならない。恐らく、落としたら林檎は潰れるだろう。






 数字が75%を超えた辺りからゴルゴリアの投球に変化が起きた。腕の振りに違和感を感じた時にーーーー


(ん? 球が……変化した!?)


 なんと、投げられたリンゴがカーブし、ヨミの手から逃れるように逃げて地面へ突き刺さってしまった。




 ドカッ!!




「っ!?」


 落ちたリンゴが爆発し、ヨミの体力が五分の一程減った。


「地面に落ちたら爆発するのね……」


 爆発してリンゴは消えたが、ゴルゴリアは新しいリンゴを手にして準備していた。


(一度で終わらない訳ね。最初からなるけど……)


 失敗したら五分の一も減らされてしまうが、やり直しのチャンスはあるから優しい方だろう。それよりも変化する球はどうするか考えながらチャッチボールを続けるヨミであったーーーー





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