第226話 廃墟の館にて



 何処かの森に隠された、廃墟の館前に集まる人影があった。その人影とは…………


「あ、帰ってきたー!」


「ご無事……ではありませんね」


「死んでいないのだから、無事でアルよ」


 アルトの街にある冒険者ギルドを襲撃していたララ、リリと帰ってきたばかりのタオとエジェルの姿があった。タオはまだ右手を治していなかった。


「アレは?」


「もう教祖に渡したよー」


「それよりも、その怪我を治して下さい。チェリーも中にいますから」


 ララ達の話から、ここにいない他の仲間も館にいるようだ。


「チェリーもいるのなら薬を使わずに済むでアルね」


「薬を作れたらいいけど、薬剤師がいないですからね」


「急ぐよ。教祖が待っている」


 4人は会話をしながら廃墟の館へ入っていく。廃墟になっている館だが、中は大分片付けられており、長らくに使われているとわかる。館で1番広い部屋まで向かう途中で少女と出会った。


「あ、チェリー!」


「ん、帰ってきたか……って、おい! あのタオが重傷の怪我をしているだと!?」


「珍しいよね。治してあげてくれる?」


 バサバサとした男口調をした少女がチェリーで、今まで大きな傷を負ったことがないタオが右手を無くしていることに驚いていた。


「どんな化け物と戦ってきたんだよ……?」


「化け物と言われてしまえば、確かにアルベルトは充分に化け物でアルね」


「アルベルト……? あ、大会で失格になった人間を止めているような奴か!」


「人間を止めているって……本人の前で言っては駄目よ? それから、すぐ治してあげて?」


 アルベルトは有名なので、すぐ誰かわかったチェリー。教祖が待っているので、回復を急かすララ。


「わかったぜ! タオ! 右手を出せよ!」


「はいでアルよ」


 口が悪いチェリーだが、タオは慣れたように気にしない様子で言う通りにしていた。


「お、綺麗に切れてんな! 『エクストラ・ヒーリング』!」


「おぉっ、流石でアル」


 初めて治療を受けるタオは強力な治癒魔法を受け、右手が生えてくる様子を感心しながら見ていた。

 チェリーは治癒師の職業を持っており、回復が使える神官と違い、攻撃魔法を使えない代わりに回復力が圧倒的に高い職業である。それに、チェリーは治癒師だけではなく……


「よし、治ったぜ!」


「ありがとうでアルよ」


「あ、私の武器は終わった!?」


「おう! 耐久力を削られていただけだったからすぐ終わったぜ!」


 そう、チェリーは鍛冶師でもあるのだ。つまり、両方とも攻撃技がない職業で完全な支援型のプレイヤーである。








「遅くなったでアルよ」


 館で1番広い部屋に入り、タオが部屋にいた者に話し掛けた。


「やぁ、聞いたよ。あのアルベルトと互角だったと」


「あの男はまだ何かを隠していた様子だったが、負けてやるつもりはなかったアルよ」


「そうか。お疲れ様だったよ。アレは確かに受け取った」


 タオと話していたのは、教祖と呼ばれている男。ヨミに纏め役を任せてほしいとお願いした人物でもある。


「聞かせてほしいでアル。次の獲物を。アルベルトにも劣らないと聞いたアルよ?」


「そう焦るな。次の標的は間違いなく激戦になる」


「ほう……私がいてでもアルか?」


「あぁ、間違いなくな」


「うわー、やれるかな?」


「大丈夫じゃない? 教祖がやると決めているもの」


「うはははっ、ならもっと良い武器が必要になるなら私に任せな!」


「…………」


 様々な目的を持って、教祖と呼ばれている男の元に集まった5人。教祖が言う次の標的とはーーーー




「邪神を崇めるルルイエ教の本部、それを潰しに行くぞ。我が神の為にーーーー」
















「へくちっ!」


「キャッ、風邪でも引いたの?」


「うぅん、ここはゲームの中だよ? 状態異常も掛かってないし…………何処かで誰かが噂でもしているんじゃないの?」


 エルフの隠れ里からの帰り道でヨミがくしゃみをし、メリッサから心配されていたのだったーーーー





ーーあとがき


2月からは忙しくなるので、すいませんが次回からは1週間に一回となります。

宜しくお願いします。




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