第221話 快進撃
アルトの街にある冒険者ギルド前へ現れたのは姿が似通った少女が2人。その歩みを止めたのが数十人の男女達。その数十人は全員が警戒するように武器を携帯していた。
「ーー名前を隠しているな。この件に無関係であれば、名前を表示することだ」
2人の少女に注意を呼びかけたのは、元4位のハイドだった。ハイドの言う通り、2人の少女は名前を表示していなかった。普通ならそれぐらいで呼び止められることがないが…………
今回は普通の事態ではなかった。
「知っているかわからないが、冒険者ギルドを襲うと掲示板で予告された。本当か嘘かはまだわかっていないが、念の為だ」
ギルドと名が付く場所では、何故か他の場所と違い、プレイヤー同士での戦闘が可能になっている。初心者よりも高いレベルの衛兵もいるからそうそうと戦闘が起きることはないが…………そんな場所を襲うと予告した馬鹿がいるのだ。
その予告を見つけたハイドは急遽に動ける仲間達を集めて、警備をすることにしたのだ。
「……どうした? 見せられない理由があるのか?」
理由を説明したのに、なかなか名前を表示されないことにハイド達は警戒心が高まる。
「……いいえ、思ったより少なくて驚きましたの」
「ッ! お前らか!?」
ようやく喋ったと思ったら、2人の少女がアイテムボックスから武器を取り出したことから犯人が判定した瞬間だった。ハイド達も武器を抜き、陣形を敷いていく。
「見たことがない顔だな……あいつらの仲間か?」
「ううん、まだだよ。今はテスト中なの」
「私達の実力を認めて貰う為に……消えて頂けるかしら?」
「そうか……しかし、ふざけた武器だな」
新顔だったので見覚えがないのは仕方がないとして……ハイド達が目に付いたのは2人が取り出した武器にあった。その武器は自らの身体の倍以上もある大きな武器で、少女が振り回せそうな代物ではなかった。
「あ、名前ぐらい見せても良くない?」
「それは構いませんが、ここにいる者程度に覚えて貰ってもねぇ……」
「少なくとも宣伝役ぐらいにはなるんじゃない? じゃ、私は妹のリリだよ!」
「もう……私は姉のララよ」
見覚えがないと言うことは、新規のプレイヤーであるのは間違いはない。なのに、ララとリリはハイド達を完全に見下したような会話をする。
「……お前らは、この数に囲まれていて勝てると思っているのか?」
「「そうだけど?」」
「貴方達! 容赦は必要ありません!!」
プライドを傷付けられ、指示を出す副リーダーのレム。
「さぁ、蹂躙の始まりだ!」
「好きに暴れてもいいわ。調整は私がやるから」
「「『相互接続』、『磁力接続』発動!」」
動き出す前にララとリリは手を繋ぎ、2つのスキルを発動した。そして、手を離したリリが巨大な武器……先端が車輪みたいになっている3メートルはあるハンマーを片手だけで振り回す。
「うりゃぁぁぁ!!」
「な、あの武器を片手で!?」
「うおっ!? 風圧が!」
「正面に立つな! 数を生かして囲むんだ!」
大き過ぎる武器に戸惑う者が振り回しただけの風圧に吹き飛ばされそうになりながらも、周りを囲もうとするが……
「『大車輪』!」
リリが独楽のように回り、囲もうと動いていた人々を力尽くで吹き飛ばしていく。
「どんなパワーだよ!? タンクが受け止めれてない!」
「姉さん!」
「こっちに。N極とS極」
『大車輪』は無限に回り続けることは出来ない。回り終えた瞬間に隙が生まれ、そこを狙ってきた第2陣がいたが……ララの発動した『磁力接続』によって、引き寄せることで救助をした。
「ちょうど密集しているわね。『ディープインパクト』!」
今度はララが巨大な武器をジャンプしながら地面へ向かって振り下ろす。ララの武器はメイスに近い形で先端が丸くなっている。
『ディープインパクト』は地面へ振り下ろすとその衝撃が地面から上へ飛び出しながら前へ襲う技であり、その威力と範囲はSTRに対応される。
「ウワァァァァ!?」
「なんだこりゃ!」
「範囲の規模がおかしすぎる!? うぎゃぁぁぁ!!」
『ディープインパクト』は別に珍しくもなく、ハンマー使いなら誰でも使える技なのだが…………その威力と範囲が普通よりも桁が違った。
「なんで、始めたばかりの新規がこんな力を持っている!?」
「教える訳がないでしょ〜」
「そうよね。貴方は馬鹿なのかしら?」
「くっ!」
ララとリリがハイド達を相手に戦えている理由は、職業とスキルにある。ララとリリの第一職業が『双子』であり、単身だと他のステータスが弱い代わり、『双子』同士が契約し、お互いの距離が30メートル以内であれば、ステータスが数倍になるブッ壊れである。契約は最初にした『双子』にしか出来ず、常に一緒にいないと実力が発揮できないデメリットもあるが。
そして、最初に発動した『相互接続』にも…………
「「私達は一緒にいるだけで強いよ」」
ララとリリの蹂躙。2人はまだ止まらないのだったーーーー
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