第212話 南の森へ



 エルフとドワーフの隠れ里を探すと決めて、南の森まで来たのはいいが…………




「……見付からないわね」


「こっちも駄目だ。エルフやドワーフの影も見えねえ」


「向こうはモンスターの群れが多過ぎて進むのはキツイ。モンスターが群れる場所に隠れ里があるとは思えないけど……」


「俺達の方は幻覚草が大量に生えていて、迷いやすくなっているとこだった。1日、2日で探索出来るとは思えない」


 ゲームの時間で1日間。4つのチームに別れて、広い南の森を探索したのだが、エルフやドワーフがいる気配もなく、様々な要因でなかなか探索が進まないチームもあった。それでも可能性がありそうだと思えるのは…………


「幻覚草が生えている方向が1番怪しいよねぇ。でも、幻覚に対する耐性がないと進むのはキツイかぁ」


「ルイスとカロナが薬作りを頑張っているが、効力は長くても5分間しかないらしい。戦いでは充分な長さだが、探索になると……」


「5分ごとに飲み続けるのもね。先に材料が切れるのが見えているわ」


 幻覚に対する耐性を付ける薬は作れるが、5分ごとに飲み続けないと耐性が切れるのでは探索には向かない。それに、その薬は1回だけ飲んでみたが、とっても苦いのだ。それを何十回も飲まなければならないのは嫌だ。


「どうする? 今回は諦めるか?」


「幻覚草の向こう側にあるなら、別ルートがありそうだけど、情報が足りないよね……」


 幻覚草の森を越えないとエルフやドワーフの隠れ里に行けないとなれば、普通の方法では難しい。アイテムもお金も豊富である『銀月の使者』でも無理なら、他のプレイヤーも更に厳しいだろう。

 だから、普通ではない特殊なルートがあると考えられる。




 可能性としては、クエスト関係で行けるようになることよね。町のNPCから受けるとなれば、私達ではお手上げになるけど…………




 やはり、情報が足りないかと思い、最初の情報源であるルファスに話を聞きに行くのが1番良いと思い、口を開こうとした時に…………


「やっぱり、ルファ「こ、来ないで! 『アースボール!』」………向こうから?」


 ヨミの言葉を遮る叫びが聞こえた。聞こえた方向は……話題になっていた幻覚草がある森ではなく、モンスターの群れが多かった方向だ。


「気になるわね。ジュン、ジョー、カロナは着いてきなさい。他は待機よ!」


「わかった」


「何か起きてんな。声から1人しかいないみたいが……」


「行ってみればわかるでしょ♪」


「無理はしないでよね!」


 ギルドメンバーの中でもAGIが高い3人を連れていき、声がした方向へ向かうことにーーーー







「ありゃ、エルフでもエルフではない奴を見つけたな?」


「本当だ♪ 長い耳をしているけど、エルフじゃないね♪」


「ほぅ、まだガキにしてはやるじゃねぇか」


「…………うひ、うひひひひひ! これも特殊なルートになるかしら?」


 声がした方向に向かうと、そこには5体の蜘蛛モンスターと戦う小さな子供がいた。だが、その子供はプレイヤーではなく、肌が黒くて耳が長かった。




 そう、子供のダークエルフがいたのだったーーーー






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