第211話 マミの提案



「そうだ、今回のイベントを邪魔しないかい?」


「邪魔ねぇ……」


 思い出したように、ジョーがそう聞いてくるが、ヨミは乗り気ではなかった。


「止めとこうぜ。どうやら、今回のイベントで失敗しても、1週間経ったらまたクエストを受け直すことが出来るみたいだぞ」


「ありゃ、そうなると邪魔する意味が薄いな。俺達も加護が欲しいから無駄なことをしているよりも普通にやっていた方がいいか」


「そうなるわね。私としてはプレイヤー達の実力が全体的に低いと感じているからもっと頑張って欲しいと思うよね」


 ヨミから見れば、プレイヤー達の中でも強者だと認めているのはほんの数人しかおらず、相手しがいが無いと思っていた。新規に入ってきたプレイヤーもいるが、まだレベルの差が大きいので育つのを待つしかない。


「あら、今まで邪魔をしてきたのに強くなって欲しいのはおかしくない?」


 今までしてきたことを見てきたメルナが疑問をぶつけてきた。確かにヨミはプレイヤー達の成長を邪魔するようなプレイをしている。倒されたら、アイテムやお金を奪われたりペナルティでステータスが一時的に下がってしまうのだから。


「別に私は強くなるのを邪魔したつもりはないわ。私が楽しめそうだったり、報酬を激減させて困らせたいから邪魔をしているだけよ」


「うわぁ、自分本位だわ……」


「それでも良いじゃないか。俺達は楽しむ為にやっているしな」


「そうだね♪ 楽しいからレッドをやっているからね♪」


「まぁ、ヨミちゃんはそう言うと思っていたわ」


 ヨミの答えにほぼのメンバーが頷く。常識枠であるメルナとヨミの為に一緒にやっているメリッサ、ジュン、ルイスは苦笑を浮かべていたが。


「イベントは三日後だけど、それまでに何かやりたいことある? 今日は大ボスに挑むつもりだったけど、イベントが終わってからでも良いかなと思って、今は暇なんだよね」


「あ、はい! やりたいことがあるんです!!」


 四天王やイベントのことで話はほぼし尽くしたので、解散する前にヨミが皆に問いかけたら…………意外にもマミが積極的に手を上げてきた。




「お、珍しいじゃない。マミ、言ってみなさい」


「あのね! ルファスさんから聞いた話だけど、第3のフィールドにある南の森で、エルフとドワーフの隠れ里があるみたいなんです!!」


「エルフとドワーフの隠れ里……ルファスからの情報ねぇ」




 ルファスの奴、面白そうな情報を隠していて……今度会った時に|絞(し)める必要があるわね!




「それで、そこでマミは何をしたいのかしら?」


「はい、特殊な鍛冶台があるみたいで! それがあれば、皆の武器を強化出来ると思って」


「鍛冶……それなら、ドワーフが持っていそうですね。エルフの方も何か……マミさん、何か聞いていますか?」


「えっと、エルフは薬に関係することに優れているとしか……」


 その言葉にルイスは考え込み、メガネをキラッと光らせる。


「僕もその隠れ里が気になりますね」


「ふむ……森に隠されているならモンスターの強さだとマミとルイスだけじゃ危ないわね。だから、私達の力が必要なのね?」


「はい! 駄目でしょうか?」


「私は構わないけど、レッドとイエローの軍団よ。見つけてもそう簡単に入れて貰えると思えないけど……」


「……? 私達らしく、奪えば良くないですか?」


「「「「「!?」」」」」




 首を傾け、マミの発した言葉に皆が呆気に取られた。そして…………




「……………あはっ、あはははははははははは!! 確かに! 私達なら奪えばいいもんね!」


 隠れ里? 希少そうなエルフ、ドワーフ? 別に蹂躙して、欲しいモノは全てを奪えばいいじゃないか。私達はレッド、イエローなのだからーーーー


「全く、マミちゃんはこのギルドに染まっちゃって…………」


「ふはははっ、いいじゃねぇか!」


「マミ、良く言ったわ♪ それこそ、私達の仲間よ♪」


「隠れ里か、南の森とわかっていれば1日で見つかるか。面白そうだ」


「エルフか、弓矢も良いものがありそうだ」


「薬のレシピがあればいいが、念の為に何人か生け捕りして欲しいな」


 マミの提案により、次の目標は決まった。まだ見つけていないが、エルフとドワーフの隠れ里を探しだし、蹂躙することに決まったのだったーーーー






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